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Vol.53 「美粧」(2007/08/20)

『日刊ゲンダイ』にエッセイを連載させて頂き、早3年半。
相変わらず、〆切前にはパソコン前でうんうん唸っています。

「そろそろ、趣向を変えてみます?」

そんな中、編集部からのメール。

…ということで、原点に立ち戻ることにしました。
テーマは、“アナウンサーの仕事”。ザ・スタンダード!

以後、数回に分けて、載せていきますね。
今回は、メーキャップの話です。

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美粧。
この場を通らずして、画面に出るべからず。

「びしょう」と呼ばれるメイク室は、アナウンサーが放送前に必ず立ち寄る場所。
1.5m×5mの大きな鏡。カウンターには、ドライヤーやヘアブラシがずらりと並びます。



備え付けのパレットも鮮やかです


「よろしくお願いします!」
待機しているメイクさんにご挨拶して、早速、髪型を作って頂きます。深夜も早朝も、お盆もお正月も。番組が放送されている限り、美粧は年中無休です。
その間、自分はせっせとお化粧。個人差はありますが…大体30〜60分でしょうか。ノーメイクで無造作な頭が、だんだんと“商品化”されていきます。

「今日はニュースだから、巻かずにストレートにしようね」
時間帯や番組に応じた、様々なスタイルを。
例えば、朝のニュースに、華やかな巻き髪はそぐわない。
逆に、深夜のバラエティでは、思い切りアレンジしてもらいます。
「今日は、おでこ全開にしよう!」
「夏らしく、アップにしよう!」
「ついでに目元も変えてみたら?このマスカラ、塗りやすいよ」



会話は続く…


話に夢中で、ファンデーションを塗り忘れてしまうこともしばしば。その間も、メイクさんの手元だけは、忙しなく動いています。
ブローして、逆毛を立てて、スプレーで固めて…。
アナウンス部一“猫っ毛”である私のコシのない髪を、どうにかして奮い立たせてもらいます。硬、柔、多、少。一人一人の髪質に合わせて。究極の、オーダーメイドです。

スタジオに入ってからも、放送直前にメイクさんが駆けつけてくれます。鬼気迫って原稿をチェックする私の乱れた髪は、僅か数秒で復活。彼女たちの膨らんだポケットには、ヘアスプレーとコームが常備されています。



原稿とヘア、それぞれ入念に


本番5秒前、4、3、2…。
「こんにちは」
お辞儀をしても微動だにしない前髪は、毎回の渾身の作。
「よしっ」
メイクさん、小さく微笑です。



オンエア終了
お疲れ様でした!


(「日刊ゲンダイ 週末版」8月20日発刊)
   
 
 
    
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