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Vol.48 「日々のおにぎり」(2007/04/30)

6月ですね。
スーパーには、鮮やかな西瓜やゴーヤが並んでいます。

食卓にも季節の彩りを…と願いつつ、日々を綴りました。
といっても、話題は春。
カレンダーを、2枚ほど戻して頂いて―。

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「いよいよ大阪では、筍のラストシーズンに入りました」

“○○県では、○○の収穫を迎えました―”といったニュース原稿さながらの言い回しに、少しだけ笑ってしまった。
タイトルは、『筍と豚ロースの味噌煮、いる?』母からの携帯メールである。

筍かぁ…そういえば、春野菜の季節だった。
実家では、この時期は豆ごはんや蕗の煮物が食卓に並ぶ。
「ごはんは、きちんと作っているの?」挨拶代わりの問いかけに、
「時間が合わなくて、なかなか…」
以降の文言は、ごにょごにょと小さく丸めてしまう。
掃除や洗濯は苦にならないものの、どうも、台所は避けてしまう傾向にある。
冬場はお鍋のバリエーションを増やして凌げたが、これからの季節は…。
夫の早朝勤務と私の勤務時間のすれ違いで、
夫婦揃っての食事は週に一、二回ほど。
そんな訳で、台所に立つことはなかなか難しい。

だが、結婚して共働きの友人たちは、
丸めた言葉の先をひゅいと掴んでこう尋ねる。
「でもさぁ、作り置きとか、しないの?
一緒に食べる時間がないなら、予めおかずを作っておいてあげたらいいじゃない」
分かっては、いる。
要は、手際が悪くて、料理に時間がかかりすぎるのが最大の原因だということが。

そんな私が、唯一こだわっている品がある。
おにぎりだ。

お米の水加減には細心の注意を。
少し固めの方が、冷めても美味しい。
中に入れるのは、紅鮭(西京焼きが美味)、昆布(大阪の某老舗の塩昆布)、鶏そぼろ(隠し味に山椒を)、ツナマヨネーズ(ツナにはたまり醤油を少し)…。
どの具の時も、必ず煎胡麻をたっぷり入れて、
しゃもじでさくっと炊き立てを混ぜる。
母は「おにぎりは、料理ではない!」と呆れるけれど。
不規則な時間に働いているお互いにとって、
時間と場所を選ばない唯一のメニュー。


シンプルに、ツナマヨネーズ
見た目よりも…味重視!


甘辛く煮たあげで包んで、キャンディ風に
一口大なので、つい何個も食べてしまいます

朝1時半に起きて、ラップでくるまれたおにぎりを会社に持っていく。
かたや、夜中に帰って来て、作り置きのおにぎりをほお張る。
そんな中で目にする、『筍と豚ロースの味噌煮』。
私にとってはかなりの応用編だから。
せめて、海苔の代わりに菜の花でおにぎりを巻いてみようかな。



早朝ニュースの前に


(「日刊ゲンダイ 週末版」4月30日発刊)
   
 
 
    
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