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Vol. 38 「虎の門」(2006/08/28)

秋の夜長。
ふっと、誰かと話したくなることはありませんか?

「悩みを聞いて欲しい」とか、
「嬉しい報告がある」とか、そういう訳でもなくて。
メールに例えると、「題名」が付きにくい内容のお話。

遅い時間にもかかわらず、
ふふっと笑わせてくれて、
気付けば、心地良い眠りに落ちていました…ごめん。

学生時代からの、友達のような。
『虎の門』って、そんな番組です。



虎の門スタッフたちと、オンエア前にぱちり☆
右手は、同期のS君。はにかみ屋さんです。
左手は、頼れるディレクター・Sさん。
井筒監督の映画コーナー「こちトラ自腹じゃ!」は、彼女が担当しています。

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「来週までに、『面白い話』を考えておいて下さい」
本番前のメイクルームで、ふいにディレクターに声をかけられました。
「次回、村上さんにも話術王にゲスト参加してもらうので」
「…えっ…」
話術王。
ゲストが「面白い話」を30秒間で披露し、秒数やシチュエーションを変えて、
その場で芸人さんたちにアレンジしてもらうという企画です。
 
深夜番組『虎の門』のアシスタントを担当して、約半年になります。
レギュラー陣は、勝俣州和さん、カンニングの竹山隆範さん、アンタッチャブルのお二人…といった方々。
入社来初めてのバラエティ番組に、当時はただただ硬直していましたが、
最近はようやくその場を楽しめるようになってきました。
そんな中での、突然の参加告知。
話のテーマは自由ですが、唯一の条件は、実話であること。
まずは落ち着いて自分の生い立ちを振り返ろうと、実家に電話しました。
「お母さん、私の面白い思い出話って、ない?」
しばらく考えて、母が一言。
「首がものすごく太かったことかしら」
「…ありがと」
勢い良く転ぶ芸人さんを見て、「大丈夫かしら」と本気で心配し、
ハリセンで頭を叩く場面にも、目をつぶって「痛っ!」。
そんな母の感性を、少なからず私も引き継いでいるのかもしれない。
複雑な気持ちで電話を切りました。
これは、自力で頑張るしかない。
ようやくひねり出した思い出を、何とか30秒になるように、削ったり足したり。
ストップウォッチを片手に、移動中にもお風呂の中でも、ぶつぶつ、ぶつぶつ。
そして、当日。胃薬を飲んで臨みました。
 
「大学時代、自動車免許の教習所に通いました。
技術検定の『ハンドル操作』では、両手を交差させるタイミングが分からず失格。
『S字』『クランク』でも、7回落ちました。
何とか試験には合格出来たのですが…。卒業式には校長先生に呼ばれ、『免許をあげる代わりに、絶対に運転しないでね』と言われました。
こっそりチョコレートももらいました」

…オチ、ないです、よね。
そんな内容を「日曜日みたいな話ですね」と救って下さったのは、
タレントのMEGUMIさんでした。
賑やかな笑いの奥にある、温かさ。少し、泣きそうになりました。

(「日刊ゲンダイ」8月28日発刊)
   
 
 
    
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