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Vol.27 「江川さんと星占い」 (2005/11/26)

寒くなってきました。
マフラー、巻いていらっしゃいますか?
ふわふわ、もふもふ。
触れた時の、あの温かさ。

江川紹子さんには、「やじうまプラス」の金曜日のコメンテーターとして出演して頂いています。
江川さんと言えば、オウム真理教が関わる一連の事件をはじめ、
冤罪事件、教育問題、その他多くの社会問題を取材されているジャーナリスト。
私がまだ中学生の頃、報道番組で厳しくオウム真理教の幹部を追及する姿は、
未だに鮮烈な印象に残っています。

番組内での舌鋒鋭いコメントはご存知の通りです。
生放送中は、あらゆる情報が秒単位で解説されていきます。
政治問題、事件、災害…。
真実をどこまでも探求し、冷静に語られる江川さんですが、
唯一、その語り口が一変する瞬間があります。

「ええーっ。今日、しし座、12位なのー?」

番組内の「星座占いカウントダウン」を誰よりも楽しみにして下さる江川さんは、
ご自身の星座が上位であれば手を叩いて喜び、
下位の時は、テーブルに突っ伏してしまって、しばらく動かれません。
その間、出演者全員が今日の「しし座」の運勢を、固唾を呑んで見守ります。

「…今日は、コーヒーにミルクを入れないとダメかしら…」

その日のラッキーカラーは「キャメル色」でした。
あくまでも、その日の占いに忠実に。
かつてご自身の星座が1位の時、私の読み終わったしわくちゃの占いの原稿を
大切そうに折り畳んで持ち帰られたこともあります。

放送が終わると、出演者とスタッフで、社員食堂のテーブルを囲みます。
先日、愛猫家の江川さんと、
人間ドックのペット版「ペットドック」の話で盛り上がる中、
配膳を手伝ってくれるADさんが、そっと近付いてきました。

「あのぅ…コーヒーのお代わりはいかがですか?」

江川さんは、マグカップをトレイに置いて、声のする方へくるりと振り返られました。

「どうもありがとう。それよりも、あなたはお食事、もう取ったの?」

ADさんのポケットの中の携帯電話は、その間もずっと鳴りっぱなしです。
江川さんの膝元には、きちんと畳まれたふわふわのマフラーが置かれていました。


(「日刊ゲンダイ」11月26日発刊)
   
 
 
    
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