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Vol.21 「12文字の勝負」 (2005/07/23)

12文字の勝負。
テレビを御覧になる時、画面の右上に注目して下さい。

知床「世界遺産」決定も“難題”
環境保護との両立なるか

松平健「サンバ」の次は
ベートーベン「第九」で踊る!


放送内容の概要を活字化したそれらは、「サイドスーパー」と呼ばれています。
「やじうまプラス」では、毎朝約80通りが画面に登場します。
忙しい朝、身支度をしながら、何時から見始めても内容が一目で分かるように
―サイドスーパーは、いわばテレビの「見出し」です。
見やすさを考えて、番組内では一行につき「12文字以内」と決められています。
字数過多を考慮して、アメリカは「米国」、アスベストは「石綿」。
キーワードは、文字の色を変えて強調します。
少ない言葉で全てを語り、且つ、的確で機知に富む。
それが、理想の姿です。

サイドスーパーは、状況に応じて流動的に表示されます。
生放送は展開が速いので、1/10秒単位で切り替えていかなければなりません。
オンエア中、番組進行の司令室であるサブ(副調整室)では、
鋭い眼力と判断力が必要とされています。
スタジオにいる私も、はっとするサイドスーパーに出会うと、
思わず画面右上に見入ってしまいます。

残念!離婚のてん末
波乱万丈のお騒がせ人生


かつて、このようなサイドスーパーを見たことがあります。
ご本人は、どのような思いで離婚されたのでしょうか。
視聴者の皆さんが、その話題に関心があるか、残念に思うかどうかも、各々で異なります。
”残念!離婚のてん末”と、”離婚のてん末”。
目を引く刺激的な言葉には釘付けになりますが、
文字が語るのは「情報」であり、それを見て「感情」を抱くのは、視聴者です。

言葉で情報を伝えているアナウンサーも…。
情報の数だけ、感じます。
語らずとも、時として表情はそれ以上に雄弁です。
その中で、主観と客観のバランスを崩さないことが、いかに大切か。

ところで、この原稿をサイドスーパーで表わすと、どうなるでしょうか。

画面の右上が指定席
サイドスーパーは静かに語る  


声に出してお伝えするのは、私たちアナウンサーです。


(「日刊ゲンダイ」7月23日発刊)
   
 
 
    
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