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Vol. 5 「オンエアまで」 (2004/08/14)

「おはようございます!」
番組開始の午前6時。
この一声が、これから始まる様々な現実の引き金となる。
だからこそ、いつだってさわやかでありたいと思っています。
新聞記事を中心に朝一番の情報をお伝えする生番組「やじうまプラス」を担当して、早くも2年が経とうとしています。

起床時刻は、毎朝午前2時。
お風呂上りにバンソウコウをはがす時の、あの、びりっとした感覚。
低血圧のため、目覚めはそんな感じです。
車で局に向かう途中、明々と電気のついた新聞販売店では仕分け作業が行われています。
寝ぼけ眼でその光景を眺めながら、「あ、始まっているな」。
数十分後には、台車に乗せられた100Kg以上もの一般紙、スポーツ新聞各紙が
どっさりと会社のスタッフルームに届けられます。

午前4時。
新聞が届くと、各記事をスタッフで一斉に選びます。
「項目決まった?」
「記事コピー、まだなのか!?」
怒号、内線の呼び出し音、コピーの機械音が響く中、
ADさんたちは、番組で紹介する新聞記事の「しわ」を伸ばすため、
汗だくになりながら新聞紙にアイロンをかけています。
ぴしっとしわの伸びた新聞記事は、この番組の名物でもあります。 

ようやく顔を出した朝日に目を細める頃には、放送数十分前。 

オープニングは、スタジオの外からです。
国際情勢、政局の動き、芸能情報…。
今日伝える様々な事柄が、間もなく怒涛の如く押し寄せます。
それらを控えた緊張感が、眼前の青空や木々の匂いなどの四季の肌触りと混ざり合って、私はいつも不思議な感覚になるのです。

午前8時。
放送終了後は、コメンテーターの皆さんを囲んで社員食堂で朝食をとります。
日替わり定食は、サバの味噌煮だったり、オムレツだったり。
そして、どんなメニューの時も、私のお皿にはゆで卵がごろん。
「村上さん、おっさんだなあ!」
「たまごは必ず一日一個って、テレビで…」
リラックスした雰囲気の中、ヤミ金融から美味しいお蕎麦屋さんの話まで。
ここで初めて自分の日常に戻ってきて、ほっ。
朝食後には、反省会と明日の打ち合わせを行い、
スタッフルームからアナウンス部へと戻る頃になって、ようやく世の中が回り始めます。

そんな日々です。
新聞紙は、上から読んでも下から読んでも「しんぶんし」―
昼と夜が逆さでも、あくまでも新聞記事を中心にした生活です。
午後10時には幼虫のように丸まって眠り、翌朝2時には、ひらひらと飛び立つ。
いつも通る道、あの新聞販売店の明かりに吸い寄せられながら。
誘蛾灯?
やっぱり、蝶ではなく、蛾ですよね…時間柄。


(「日刊ゲンダイ」8月14日発刊)
   
 
 
    
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