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Vol. 1 8月21日 『阿弥陀堂だより』

 
暑中見舞い。
高校野球。
午前中の、各局のアニメラッシュ。
世間では「夏休み」のはずである。

しかし最近、私はこの言葉を聞くと、わくわくするというよりもむしろ息苦しくなってしまう。
大人になってからの夏休みは、幼い頃と比べたら極端に短い。
それ故切ないのか?いや、日数だけではない。
甘美で刹那的なあの頃が、永遠にクレヨン描きで心に存在しているからだろう。


最近、プレイステーション用ソフト「ぼくの夏休み2」のCMをよく見る。CGの主人公が釣りをしたり、海水浴に出かけたり。いわゆる小学生の時に経験したであろう様々な「冒険」が、疑似体験できる内容らしい。画面いっぱいにはじける主人公をぼーっと見ながら、その精巧なバーチャル具合にむしろ寂しくなるのは私だけであろうか。

ちょうどこの時期にかき立てられる、懐かしさや、ほのかな寂寥感。そういった気持ちが、四季を通じて見事に彩られる映画があった。

「阿弥陀堂だより」

東京に住む孝夫(寺尾聰)と美智子(樋口可南子)の夫婦。夫は新人賞を受賞するも、それ以降日の目を見ない、売れない小説家。妻は大学病院で最先端医療に携わる有能な医者だった。しかしある時、美智子はパニック障害という原因不明の心の病にかかる。仕事にも、都市の生活にも疲れていた二人は、それをきっかけに、孝夫の故郷、信州に移り住むことを決意する。

山里の美しい村に帰った二人は、96歳の老婆おうめを訪ねる。彼女は、阿弥陀堂という、村の死者が祭られたお堂に暮らしていた。何度かおうめのところに通ううちに孝夫は、喋ることが出来ない難病を抱える少女小百合に出会う…。

派手なカメラワークはない。定点カメラの先に広がるのは、濃い緑と、うねる青空。鳥のさえずりに、風の音。カメラが瞬きしてしまいそうな、眩しすぎる景色。
「となりのトトロ」の実写版といったところか。

現在、アナウンス部内には「夏休み希望表」が貼られており、各々が休みを申請している。「スローフードならぬ、スローライフを。」
うーん、行き先は…緑萌える信州?

■作品データ/『阿弥陀堂だより』■
監督・脚本:小泉堯史
原作:南木佳士(文勢春秋刊)
出演:寺尾聰、樋口可南子、小西真奈美、田村高廣
香川京子、吉岡秀隆、井川比佐志、北林谷栄
配給:アスミック・エースエンターテインメント/2002年/日本/128分

※2002年10月5日みゆき座 ほか全国東宝洋画系にてロードショー

日本アカデミー賞最優秀賞主要8部門を受賞一した『雨あがる』の小泉尭史監督による最新作『阿弥陀堂だより』。
1年に及ぶ長期撮影で実現した美しい四季の映像と心の物語です。

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