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8月24日 プレイバック・報道ステーション企画その6
『小平奈緒』

真夏から真冬に逆戻り。バンクーバーオリンピックで、私が一番マークしていたのはスピードスケートの小平奈緒選手でした。

実は、小平さんと初めて会ったのが、今から9年前のことでした。
当時スーパー中学生として注目され始めていた小平さんと交わした言葉がとても印象に残っていて、いつかは彼女の特集を作りたいと思っていたのです。

それが実現したのがバンクーバー五輪のレース直前、今年の2月11日でした。
バンクーバーのオリンピック放送センターの裏の港から生中継でリポートし、なんだか夏のオリンピックの中継のような妙な気分になったのを覚えています。

それでは。プレイバック・・・小平奈緒

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プレイバック・報道ステーション企画その6
『小平奈緒』

 

今シーズン、スケート関係者の度肝を抜いたのは、11月7日に行われたワールドカップ第一戦
ベルリン大会での小平奈緒さんのすべりでした。

500mでは、後半ぐいぐい追い上げるダイナミックなパワーをみせつけ
中国の王北星と、ドイツのウォルフという世界のビック2に続いていの3位に入賞。
<T:38秒19 3位>

さらに小平さんが最も得意とする1000m、
トリノオリンピック金メダリスト、オランダのティメルと互角の勝負を展開します。
圧巻だったのは、最後の10メートルです。
ティメルを振り切り、1分15秒92の自己ベストをマーク。
2位で表彰台に立ち、世界のスケート関係者が驚きの声を上げたのです。


  

  

いったい彼女の強さはどこから来るのでしょうか。
大学に入ってから小平さんを指導している結城匡啓コーチに伺ってみました。

宮嶋:「彼女の魅力はどこですか?」

結城:「わからないんですよね。スケートが好きでしょうがないということでしょうかね」

小平:「持ってきているDVDが全部スケートのDVDなとこらへんが」

結城:「きつい練習になったときににやっとするんですよ。」

小平:「学びがあることをするのは楽しいんです。」


  

  

  


実は、小平さんは、今から9年ほど前、今シーズンの高木美帆さん同様、長野県茅野のスーパー中学生として、脚光を浴びていました。


  
長野県茅野北部中学1年


中学2年生のときに、高校生の吉井小百合を破って全日本ジュニアで優勝するなど、
将来に大きな期待を寄せられていました。


  

  


しかし小平さんはスケートだけの道を選びませんでした。

小平:「将来の夢が学校の先生になることだったので、オリンピックに出ることと同じくらい大切な夢をもうひとつ追いかけたいなと思っていたので・・・」

勉強とスケートの両立を目指して信州大学教育学部に入学し、去年、無事教員免許を取得しました。

卒業して迎えた今シーズン、23歳で、ようやくスケート三昧の日々を送れるようになりました。


  

  


その成果は、すぐに現れました。
10月に長野のエムウェーブで行われた全日本距離別選手権で、500m1000m1500mをすべて大会記録で制し、16年の大会史上、初の三冠を達成したのです。


  

  

満面笑みの小平さん、三冠達成の快挙をさらりと解説してくれました。

小平:「今まで授業や卒論で休めなかった時間が、単純にお昼寝ができるようになり、体を休めることが出来たので、いい練習ができたんだと思います。」



大学時代から繰り返されてきた、静かな音のないトレーニング。
氷を蹴るときの、かかとからつま先に向かう体重移動の感覚を、ゆっくりと体に覚えこませていきます。

指導をするのは理論派コーチとして知られる、信州大学の結城匡啓教授です。


  

  

結城教授は、小平さんの卒業論文の担当教官でもありました。

小平さんが選んだ卒業論文のテーマは、スピードスケートのカーブ滑走動作を科学的に分析することでした。。

結城教授:「世界で初めてだと思うんですけれど、カーブの入り口から出口までの第一カーブのエリア全部を、複数のカメラで見ることによって立体的にコンピューターで合成するということをやりました。」


 


今から2シーズン前、長野で行われた世界距離別選手権の1000mで優勝したアニー・フリージンガーと12位だった小平さん自身のコーナリングの違いを比較分析したのです。

上が小平さんで下が優勝したフリージンガーです。

ひざ、足首、いずれも、フリージンガーは、小平さんよりも鋭角に曲げています。

さらに、速い選手ほど、腰がまえにあり、上半身を前に投げ出して滑っていることがわかったのです。



 

小平:「実際にやってみるとすごく大変で、ずっと研究室にいるような生活を送っていたりしたんで、結構大変だったんですけど、でも、そういう女子選手を見たことがないので、そういう選手がいてもいいのかなと思います。」


 

バンクーバーオリンピックを見据え、今シーズンの課題は、卒業論文で見つけたトップ選手の特徴を自分のものにすることでした。

股関節、ひざ、足首の角度、さらには上体のポジションなど、データに出てきた数字を頭に入れながら、体を前傾させるように、スケーティングを改造していきます。

小平さんの大きな武器は、自分で考え、自分で修正をしていくことが出来ることなのです。
この小平スタイルの原点は、実は子供時代にありました。


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