中高年の恋愛物語です。
単にそう聞くと、皆さんはどんな映画を想像するでしょうか?
官能的なドラマ?それとも?
ところが、主演が彼ら二人だと知ったとたん、
きっと心に沁みる物語なのだろうと、期待が高まることだと思うのです。
まさにその通りで、
もう、それは一流の映画です。
40代以上の、50代60代70代80代〜…
そうした大人の方々が、絶対に満足できる映画だと、
30代の私が言い切ってしまいましょう。
30代の人にも、絶対に観てほしい。
20代の大人にも、是非観てみてほしい。
上質な映画を求めているあなたに、うってつけの作品だと宣言してしまえます。
ダスティン・ホフマン演じる「CM音楽家のハーヴェイ」は、
離婚後一人暮らしの62歳。
一人娘の結婚式に出席するも、
娘には、義理の父とヴァージンロードを歩くと告げられます。
家族の輪からも友人の輪からもはみ出てしまった実父ハーヴェイ。
娘と一生懸命会話を膨らませようとするのに、
必死になればなるほどうまくいかない。
誰が悪いというわけではない。
けれどうまくいかない。噛み合わない。
ひとつひとつの挙動から機微が細やかに伝わってくるから、
実父ハーヴェイの疎外感がより一層浮き彫りになり、
物悲しさを覚えずにいられないのです。
わたしは、自分の父親とのあれこれを思わず重ねてしまってせつなくなった。
きっと観客みんなそれぞれが、
人生のそこここを重ねてしまうであろう、リアルな関係が表現されています。
ダスティン・ホフマンその人、だからこそのハーヴェイ。
エマ・トンプソン演じる「空港で働くケイト」は、
過干渉な母親を抱える45歳の独身女性。
仕事以外では趣味の小説を楽しむくらい。
未来に期待することをやめ、
諦めを平和だとすり替えることで、毎日をこなしています。
何かがだめなわけでもないし、何かのせいでもない、
たまたまそういう人がいなかったから結婚していないだけ、なのに。
友人に背中を押され出向いたお見合いデートでは、
男性側が自分に興味を持っていないことに勘付きながらも
会話を繋げる人の良さが、よりケイト自身を傷つけます。
その居た堪れなさ、リアル。
若い美男美女の恋愛映画では見られない、
泣き笑いしたくなるような、
ユーモアと綯い交ぜの悲哀が見事に描かれています。
年齢を重ねていくと、挑戦することが怖くなる。
期待して裏切られることを思うと耐えられらないから、臆病になる。
そんな、人生経験を積んできたからこそしょってしまった荷物(?)を、
大袈裟ではなく軽やかに見せてくれる。
ここに一流があるといえるでしょう。
軽やかに残る。
見事な絶妙です。
過度に甘いわけでなく、
でもあたたかい。
年を重ねていれば誰にでもあるであろう、
生きて来た、生きて行くことに纏う疲れや、孤独。
それらを描くからこそ、
人と人とのつながりや愛情がより眩く見えるのかな。
この映画で、心が照らされました。
みなさんも、是非!
さあ、この素晴しく一流のこの映画。
さぞかし百戦錬磨の大人の監督によるものだろうと思いきや。
1970年生まれのジョエル・ホプキンス、監督・脚本!
ですって。
2001年に、デビュー作で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、
それでこの作品!とな!!!
す…凄いですよね。
天晴れです☆
『新しい人生のはじめかた』
└─ http://hajimekata.jp/
※2010年2月6日(土)より、TOHOシネマズ シャンテ ほかにて公開
配給/クロックワークス 2009/イギリス |