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11月8日 札幌で見たもの。

「北海道のファイターズ」
日本一決定の瞬間に、
僕がどうしても入れたかったフレーズです。

2006年10月26日、北海道の歴史が変わった日。
僕にとっては、まさに「シンジラレナ〜イ」日。
幸運にも、北海道日本ハムファイターズが日本一を決めたその試合で、実況を担当しました。
アナウンサーとしては、もう本当に幸運、ありがたいとしか言いようがありません。

第5戦の実況を担当することは決まっていましたが、
まぁ4勝1敗で決まることはないだろう、
そう思っていました。
ところが、第4戦を終えて日本ハムの3勝1敗。
その夜、冷え込む札幌の街で、僕は今さら怖気づきました。
アナウンサーとして適切でない言葉で表現すると…、はい、ビビッてました。
とにかく朝方まで資料を作り、あっという間に当日を迎えました。



僕、結構開き直れる性格なんです。
トリノオリンピック開会式のときも、そうそうテレ朝の就職試験のときも、
最終的には開き直ってました。
でも今回は無理でした。
なんだかずっとふわふわしていたような気がします。
ゲストの皆さん、解説者の皆さんに助けられたことは間違いありません。
ただ、今回はそれ以上に、札幌ドームの雰囲気に助けられました。
あの異様とも言える空気の中で、その流れに乗って喋っていました。
もちろんそれは、日本ハムを応援するということではありません。

大観衆の後押しを受け、札幌胴上げに向けて突っ走るファイターズ。
大観衆の重圧の中、悲壮感すら漂わせながら立ち向かうドラゴンズ。

あの日の札幌ドームにいれば、この2チームの対決構図が自然と見えてきました。



8回、SHINJO最後の打席、ああいうシーンを目の当たりにしたとき、
実況アナウンサーは何を喋るべきなんでしょうか?
僕には、よく分かりません。正解は、ないのかもしれません。
ビデオであのシーンを見返しても、自分の実況が良いのか悪いのか、よく分かりません。
ただひとつ、あんな気持ちでマイクに向かったのは初めてでした。
これから先、そう多く巡り合うことはないであろう、
まさに心震えるシーンだったことは間違いありません。

北海道の人たちは、ファイターズが好きです。
全国的には知られていない守備固めの選手が登場しても、
同じような大歓声が起こります。
それは、その選手がチームにとって欠かせない存在であることを知っているからです。
北海道のファイターズが、頂点に立った瞬間。
野球を好きで良かった。
野球実況をやってきて良かった。
僕にとっては、そんな瞬間でした。





   
 
    
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