前の記事を読む 次の記事を読む  
トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー
 
 

 
 11月27日 模型の趣味を仕事に活かす?

 
私が担当しているスーパーJチャンネルの木曜日コーナー「ナゼダス調査隊」では“交通事故鑑定人”という長寿コーナーがあります。
交通事故で親族が亡くなってしまった方、大きな障害を負った方の中で、警察の事故捜査にどうしても納得がいかない場合、民間の交通事故鑑定人に再調査を依頼することがあります。
気骨の鑑定人・駒沢幹也さんは80歳を越えて基本的には鑑定の仕事を引退なさいましたが、あまりにも目に余るケースでは年に何件かだけ鑑定なさいます。これまで100件以上のずさんな警察の調査を覆してきました。ナゼダス調査隊ではこれまで2年以上駒沢先生に密着取材をしており、先日の11月22日オンエアー分では第19弾となりました。

気骨の鑑定人駒沢幹也さん(現在は引退なさっています)

実車が大破したり、廃車になっているケースが多いため、事故の形態をわかりやすく紹介するためには工夫が必要です。番組ではCG(コンピュータグラフィックス)を使うことも多々ありますが、最近は模型を使っての説明も増えてきました。

正確に1/24にスケールダウンされています

この模型、実は私が個人的に作っているのです。
小学生の頃からプラモデルを作るのが大好きだった私は、大人になった現在も時間を見つけてはこの趣味を続けています。
もう1年以上前ですが、ひょんなことから事故車両のプラモデルを作って駒沢先生のところへ持っていったら「これはいい。わかりやすく説明できる」と誉めてもらったのがきっかけで、それ以降は基本的に放送で扱った事故車両はすべて作りました。
事故から何年も経っているケースが多く、ズバリそのものの車両のプラモデルが現在では市販されていないことも多いのですが、模型のネットワークを通して絶版品を探し出します。
これまで50ccバイク、宅配便の車、ワンボックスカー、ダンプカーなどと10台近く作ってきました。完成模型はすべて被害者の方々や駒沢先生に差し上げています。中には「こんな模型があるとは知らなかった、ぜひ裁判で使いたい」とおっしゃった方もいらっしゃいました。

同型のトレーラーを借りて実験もしました


今回は30tトレーラーとワンボックスカーの事故でした。
ワンボックスカーを運転していた24歳の青年が亡くなっています。
トレーラーの事故の場合、「ジャックナイフ現象」という特有のケースが出てくるので模型を使っての説明が有効と思われました(番組では実際に同型のトレーラーの実車を使っての実験も行いました)。

既製品のモデルはカーキャリアタイプでした

ところが現在市販されている1/24スケールの模型は国産車ではカーキャリアタイプのトレーラーしかありません。
「たとえ実車と違っても、ジャックナイフ現象の仕組みを説明するだけならこれでも有効だろう」との考えのもとに製作しましたが、実際に組みあがって実験してみると、ジョイント部分の支柱の位置が事故車両と微妙に異なり、上手く説明出来ない事がわかりました。牽引車部分の後輪タイヤの数が違うのも衝突位置だけに気になります。

図面を引いて板から作っていきます

そこで牽引車部分を改造してタイヤの数を減らして実車と同じ寸法にし、トレーラー部分は図面を引いて木の板からフルスクラッチすることにしました。
この様にゼロから作るのは私も初めての経験です。交通事故ですので資料写真はそれなりにありましたし、同型トレーラーで実験した時にデジカメで多数の細部写真を撮っておきました。
模型を作るのは大好きですが、いつも思うのは事故にあわれた被害者の方々のこと…しかも今回は死亡事故です。何度も身の引き締まる思いをしながら作りつづけました。
集中して作っていたので気がつかなかったのですが、製作期間は3週間もかかっていました。毎日睡眠時間が3時間で乗り切れたのには自分でも驚きです。そして完成品を遺族のご両親に見ていただき、理解を得られた時には疲れも一気に吹き飛びました。

それでは、ちょっとだけ作成風景をご覧下さい。
画像をクリックすると、拡大画像がご覧になれます。

こだわりの一つ。
リード線を切り、
両脇から切り込みを入れます。
ちょうつがいに見えますか?
サーフェーサーを吹くとご覧の通り。
塗装を終えてとりあえず完成です。
ホロをつけて汚し塗装をして仕上げます。
撮影スタジオでは、
超小型CCDカメラも使いました。

一般に「プラモデルが趣味です」というと、「あんなオモチャをまだ作っているの?」という反応が大半なのは本当に残念なことです。欧米では大人のホビーとしての社会的地位が確立されています。私の作例は拙作ですが、決して子供のオモチャではないことを理解していただけますでしょうか?

今回のトレーラー模型も駒沢先生に寄贈し、今後の裁判などに役立てていただくことになりました。

スーパーJチャンネルのサイトへ スーパーJチャンネル『ナゼダス調査隊』へは
こちらからどうぞ!
 
 
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む  
トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー