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5月14日 気まぐれNY通信 「スペースシャトル(2)」


5月に予定されていたスペースシャトルの打ち上げが7月以降に延期になりました。
「安全対策に時間がかかり、打ち上げ延期」
いやな予感が的中してしまいました。
私のNY滞在中に打ち上げを見ることはほぼ絶望的です。
NASAに何があったのか?
アメリカでのシャトル取材を総括いたします。

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■発射台のディスカバリー号
5月3日。ケネディ宇宙センター(フロリダ州)の発射台には、
ディスカバリー号のオレンジ色の外部燃料タンクが朝日を浴びて輝いていました。
シャトルの周りをバスでグルッと一周すると、
四方にカメラがズラッと設置されています。
この至近距離に加えて、中距離、長距離と、
あわせて100台以上の地上カメラが、
シャトルに傷がつかなかったか、異変がないか、
打ち上げを見守ります。

ここから宇宙へ打ちあがるのかと思うと、感慨深いものもありましたが、
今回の延期決定を受けて、追加の作業のために、
再びシャトルを組み立て棟へ戻すことも検討されています。
本来なら、発射台にシャトルが設置されたとなると、
「あとはカウントダウンを待つのみ」となるはずですが、
いまのNASAにはやることがたくさん残っていて、そういう雰囲気ではありません。
打ち上げ再開への道のりはまだまだ遠そうだと、
諦めがついたような気もしました。

■密かなロマン!?
スペースシャトル担当として、本格的に取り組み始めたのは今年に入ってからですが、
その間、ヒューストン(ジョンソン宇宙センター)へ2度、
フロリダ(ケネディ宇宙センター)へ1度、取材へ行き、
NASAやJAXA(宇宙航空研究開発機構)の方から
直接お話をうかがったのをはじめ、関連の記事を読み漁り、
書籍やDVDを購入したりと、
少し恥ずかしながら、宇宙に思いを馳せ、密かに夢を温めてきました。
(打ち上げに向けて、気分を盛り上げよう!としたわけです)

「宇宙へ行くと人生観が変わる」とはよく聞きますが、
打ち上げを間近で見るだけでも、
「人生にそれなりの(?)インパクトを与える」(経験者談)ようで、
それを体験するのが楽しみだったのです。

■延期の予感・・・
しかし、それだけ「入れ込んできた」だけに、
今回の延期は、予想のできる展開でした。

NASAは当初から、できるだけ早く打ち上げを再開させると
繰り返し発言していましたが、
外部からは現状での打ち上げを疑問視する声が上がっていました。

スペースシャトルの大きな使命は、
2010年までに国際宇宙ステーションを完成させることです。
そして、宇宙ステーションの完成をもって、
シャトルの打ち上げが終了する予定であることもすでに発表されています。
つまり、今回の打ち上げ再開は、「終わりの始まり」ともいえます。
(今度の打ち上げは通算114回目)

宇宙ステーションを完成させるには、
今後20回以上シャトルを打ち上げる必要がありますが、
ブッシュ政権は、その後は新型の宇宙船(完成は2014年以降という)で、
月と火星への有人飛行を目指すことを打ち出しています(新宇宙政策)。
そうした状況もあり、
「NASAの上層部は、終わりが見えているシャトルには、
できるだけ時間とお金をかけたくないないのではないか」
といった報道もなされてきました。

現に、NASAのグリフィン長官は、一時、
飛行再開への評価を下す独立調査委員会の最終報告を待たずに
早期の打ち上げを優先させる姿勢も見せていましたが、
その後、案の定、さまざまな問題点が浮き彫りになりました。
さすがに内外の批判の声を無視できない状況になり、
先日の延期発表に至りました。

こうしてNASAは、シャトルを発射台に設置し、
「ついに飛行再開だ」と外部に示した矢先に、
安全面にいまだ課題を抱えていることを露呈してしまいました。

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【取材後記】
自分の力でコントロールできないことには、あまりくよくよしないので、
むしろ「ここまで取材できて本当によかった」という思いが強くあります。
(特に自分なりに夢をみることもできましたので・・・)

未知の世界への夢を託す意味でも、野口聡一さんを応援しながら、
今後もしっかりとシャトルの行方を見守り続けていこうと思います。

   
 
    
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