放送したお宅
2012年11月9日(金)放送
埼玉県上尾市・内田邸
− 外壁が3°傾いた家 −

2012年1月

敷地面積 137平米 (42坪)
建築面積 82平米 (25坪)
延床面積 108平米 (33坪)
木造在来工法
建築費:非公開 坪単価:非公開



スギ板張りの外壁が4方共に手前に向かって3度傾いています。内壁は垂直のため上方ほど壁が厚くなり、配管等を内部に収めてすっきりした外観を実現しています。

1階の居間と食堂・台所は床と天井双方をタモ張りとした上下対称のようにも見える空間。構造壁の上部には鏡を貼って空間の連続性を出しています。

1階の天井は外壁の傾きに合わせ3度傾いています。居間には一部吹き抜けとし上階から自然光を導きます。吹き抜け部分の内壁の「納戸色」は建主自らが塗装したもの。

部屋に合わせてデザインされた細長い食卓も床・天井と同じくタモ材。庭に面した大きな開口部は、ガラス戸の内側にルーバー戸を設けて採光を調節します。

1階北端には和室。こちらも西面の藍色の壁は建主によって塗装されました。格子状の天井は裏側に照明とエアコンを収めています。

2階北端は寝室。上ほど壁が厚いので、その厚みを利用して本棚を造作。窓にも庇が付いているのと同じ効果があります。

洗面台は廊下に設けました。浴室へのドアの手前の吹き抜けは階下の居間に通じています。脱衣室は天窓で採光します。

2階の中央に設けたバルコニー。プライバシーに配慮し周囲を壁で囲っています。このバルコニーに面した予備室は将来の子供室です。

建築家のプロフィール
宮澤 豪
1972年 神奈川県生まれ
1996年 日本大学芸術学部美術学科 卒業
1997年 株式会社青島裕之建築設計室 勤務
2002年 RMiD+A 設立 中国にて活動
2004年 ミコウチアーキテクツ有限会社 設立
2012年 株式会社宮澤建築設計室に商号変更

株式会社 宮澤建築設計室 一級建築士事務所
所在地 横浜市西区平沼1-1-15-303
電話 045-577-5296
FAX 045-577-5297
E-mail miyazawa@m-architects.jp
URL http://m-architects.jp

建築家の一言
「目の字プランの住宅」
敷地は北側に幅員4m未満の道路(2項道路)、そして周囲は築30年以上の古い住宅と、新築住宅が混在する住宅地であり、西側の住宅超しには大きな梅の木が存在するという周辺環境でした。
施主からの要望は「ゆとりがありながらもコンパクトである」、「周囲からの視線を遮りながらも自然光を取り入れられる」という条件がありました。
それは都内の狭小住宅にみられるような極度な「コンパクトさ」ではなく、最低限のゆとりを持てるほどよい床面積を保ちながらも、廊下などのスペースを削ぎ落とすことによる「コンパクトさ」を求められました。
そこで本計画は日本の伝統的な農家の間取りにあるような、各室が隣接することにより床面積を最大に確保できる「田の字プラン」をヒントに、1階はダイニングキッチン・リビング・階段室・和室を並列に配置した「目の字プラン」とする計画にたどり着き、ここでいう「コンパクトさ」のある計画にたどり着きました。
2階はワークスペースと洗面スペースが主寝室から予備室までのつなぎの空間となることで各空間が隣接し、1階同様に無駄を削ぎ落とした計画としています。
また、周囲からの視線を遮るためには、閉鎖的な外観とするというストレートな解決方法をとりました。
2階の中心にある中庭的なバルコニーと吹抜け、随所にあるトップライトが閉鎖的な外観でありながらも自然光を取り入れるような計画としています。
各室には部分的に斜めの壁や天井、アクセントカラーを採用することで均一ではない広がりのある空間となるよう配慮をしています。
斜めに張り出した外観は、その内部に空調ダクトや縦樋を設け、意匠性と設備機能の更新性に配慮した計画としています。木造通気工法を採用しているため、通気層に雨水が侵入した場合でも、居室側の壁面には雨水が触れないよう配慮し、外壁保護に対する観点からの機能的な美しさを目指したデザインとしています。
渡辺篤史の感想
ご夫婦共に設計の仕事をされているプロですが、自宅の設計に際して敢えて知人の建築家に依頼されました。文字通り施主と建築家のコラボレーションによって生まれた住宅です。壁が傾いた外観のインパクトに目を奪われがちですが、室内は至る所に心使いが感じられます。大胆にして繊細な建物です。