放送したお宅
2012年7月6日(金)放送
東京都杉並区・八木邸
− 十字形に隙間の開いた家 −

2011年5月

敷地面積 78平米 (24坪)
建築面積 39平米 (12坪)
延床面積 77平米 (23坪)
木造
建築費:2250万円 坪単価:98万円



白い箱形の建物。中央に十字形の“隙間”が開いたようにスリット窓が入っています。正面からは見えない奥行き方向の中央にもスリットがあり、箱にリボンを掛けたような形になっています。

1階は“隙間”が周囲を巡る明るい空間。大きな靴収納は一見その存在がわからないデザイン。中央の“隙間”にある階段室は玄関から一旦外を経て2階へと昇るイメージです。

“隙間”からの明かりが白い空間に拡散する2階は、上下で分けた2世帯住宅の子世帯。寝室も建具で仕切らないワンルームですが“隙間”が緩やかな間仕切りとなります。

居間・食堂の広さは単体で6畳弱ですが、隣接する空間との繋がりと“隙間”を通して外部空間を感じる事で広々した印象。西面は前面収納になっています。

“隙間”を挟んで居間と対面する台所。収納が多く、作業スペースも多く採られた機能的な空間です。

台所の隣にはシャワースペースとトイレ。トイレからは隠し扉のようなドアを通ってクローゼットへ通じています。

クローゼットから“隙間”に架かった橋を渡って寝室へ。寝室には床がグレーチングになったテラスとロフトがあります。ロフトは屋上に出られるので天窓のメンテナンスが行えます。

1階は親世帯。ワンルームの居室と大きめの浴槽を持つ広い水回りがあります。“隙間”から充分な光が入るため、1階ながら明るい空間となっています。

建築家のプロフィール
富永哲史(とみながてつし) 横尾真(よこおしん)
富永哲史
1967年 東京に生まれ
1990年 東海大学工学部建築学科卒業
1992年 東海大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程終了
株式会社 計画・環境建築 YAS都市研究所入所
2001年 株式会社 計画・環境建築退所
2002年〜 株式会社 富永事務所一級建築士事務所を設立
スタジオとして富永哲史建築設計室を設立
2006年〜 東海大学非常勤講師
横尾真
1975年 山梨県生まれ
2001年 東海大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了
2001〜04年 池田昌弘建築研究所
2004年 OUVI設立
2008年〜 ヨコヲノ森活動開始
2012年〜 東京理科大学非常勤講師

株式会社富永事務所
一級建築士事務所 富永哲史建築設計室
所在地 東京都町田市玉川学園1-25-27
電話 042-739-3591
FAX 042-739-3593
URL http://tomiarc.com/

建築家の一言
住宅が密集する都心の敷地には眺望は無いが故に、あえて光の取り入れ方に対してポジティブに向き合えたことで、今回のお施主様の住宅は完成しました。最大限のボリュームを計画し、水平垂直方向に大胆にスキマを与え、光を入れ込むことで空間を間仕切り、小さいながらも多様なシーンをつくり出せるのではないか考えました。スキマには強すぎる程の太陽光線が注がれますが、そのスキマによって光が濾され、ゆっくりと移りゆく時と共に心地よくそれぞれの居場所へとこぼれていきます。そんな自然の光に頼ることで照明を極限まで無くしたり、自然の時の刻みに身を任せて寝起きしたりすることが我々本来の姿かもしれません。
また、家の中を回遊し必ず光に満ちたスキマをくぐることで、無意識の中でも外部を残像として薄らと意識に残る新しい外部空間の感じ方が御提案出来たのではないかと思っています。
渡辺篤史の感想
四角い箱にリボンを掛けたようなトップライトと横スリッド窓が特徴です。室内にいながら、近隣の緑、雲の流れ、夜には星・月が見えます。小さな建物でありながら、それを感じさせない広がりです。住み手の心地よさを思ってのデザインが、結果的に美しい空間になっています。家族をやさしく包み込む家です。