放送したお宅
2012年1月27日(金)放送
神奈川県川崎市・山縣邸
- 四季を感じる山懐の家 -

2011年4月

敷地面積 437平米 (132坪)
建築面積 122平米 (37坪)
延床面積 168平米 (51坪)
木造
建築費:非公開 坪単価:非公開



都心からも近い住宅地でありながら、緑豊かな山林に隣接する敷地。そんな環境に敬意を持って低く構えたように見える建物。大きなモミジは元々あった木を残したものです。

玄関は黒を基調とした空間。自然と明るい居住空間へと導かれます。地面から30cm掘り込んだ食堂からは、庭とその向こうに広がる山の景色を楽しむ事ができます。

食堂と居間の間には常緑樹を植えた中庭を設けました。台所に立っても緑豊かな景色を楽しめます。台所の作業台は台形で畳1枚分よりも広いもの。冷蔵庫は隣接する食品庫に収めました。

客間にも使われる和室。固定の照明器具は付けず敢えて暗い空間としました。壁は藁スサ入りの土壁。同じく地面より掘り込まれているので横長の窓からの眺めも広がりを感じます。

食堂から中庭脇のスロープを上がると居間。ここで初めて床が地面より高くなります。ここでも庭や山の景色を違った角度から楽しめます。

中庭の脇に作られた「外室」と名付けられた空間。屋根の下で外の空気を楽しむ場所です。飛び石の先、モミジの木の下にはコンクリート製のテラスも設けられています。

居間から半階上がった場所に2つの個室。折れ戸の開閉で居間と一体にも個室にもなります。さらに半階上がると水回り。浴室は隣家からの視線を気にせず景色を楽しめる位置です。

浴室からルーフバルコニーへ出られる造り。らせん状の動線の終点にあるのが主寝室。こちらも山の景色を存分に楽しめる空間です。

建築家のプロフィール
山縣 洋(やまがた よう)
1962年 東京都生まれ
1985年 東京工業大学建築学科卒業
1987年 東京工業大学大学院修士課程修了後、竹中工務店入社
1994~96年 OMA
2002年 山縣洋建築設計事務所設立
現在 明治大学・東海大学・東京都立中央・城北職業能力開発センター非常勤講師

山縣洋建築設計事務所
所在地 神奈川県川崎市多摩区三田1-26-28ニューウェル生田ビル302
電話 044-931-5737
FAX 044-931-5738
E-mail yo-yamagata@mse.biglobe.ne.jp
URL http://www5d.biglobe.ne.jp~yoy

建築家の一言
市が管理する豊かな自然林の山に隣接する敷地を初めて見たとき、
家がこの緑地に寄り添うようにある状態をイメージしました。
周囲の豊かな自然と囲まれた内部空間の間にテラス、外室、中庭などの
中間領域をつくり、内部と自然が緩やかにつながっている状態をつくっています。
特にダイニングとリビングの間に中庭と外室をつくることにより、内部と外部が
混ざり合ったような不思議な空間が生まれています。
建物内の床は6つの異なるレベルが設定され、それらは目線より低い段差により
緩やかにつながっています。玄関から最上部の2階のテラスまで螺旋状に上がるにしたがって、
様々なシーンが展開します。
洞穴のような和室、屋根のある外室、モミジの木の下のテラスなど様々な
異なる雰囲気の場所をつくることにより、季節や時間帯、天気や気分に応じて、
居心地のいい場所を見つけて暮らせるような家となればいいと思いました。
渡辺篤史の感想
建築家の自邸と言う事で思い切った実験的な建物を想像していましたが、実際に身を置くとそれだけではなく生活のし易さへの配慮がたくさん感じられました。また、背後の雑木林=自然に対する畏敬の念、そこに住まわせて頂く、建てさせて頂くという意識が形に出ています。住人であり設計者である建主の人柄を反映した、とても気持ちの良い空間です。