放送したお宅
2011年10月28日(金)放送
千葉県習志野市・川谷邸
- “滝”のサンルームがある家 -

2010年10月

敷地面積 145平米 (44坪)
建築面積 68平米 (21坪)
延床面積 122平米 (37坪)
木造
建築費:3000万円 坪単価:77万円



住宅地に溶け込む落ち着いた外観。所々に現れる正方形と円形のデザインで個性を主張します。2階中央にガラス張りのサンルームがあるのが特徴です。

約12畳大の居間兼食堂。天井の一部を透明ガラスにして2階のサンルームから自然光を取り込みます。床高を低めにして南側の庭との一体感を高めています。

居間を挟んで夫婦それぞれの趣味室を設置。西側の奥様の部屋にはニットソーイング用のミシンが並び、北側のご主人の部屋には自身で組み立てた真空管アンプが置かれています。

台所はサンルーム越しに空を眺められる位置。水回りは、大きく開く引き戸や段差を少なくするなどバリアフリーに配慮しました。

2階中央に位置するサンルーム。ガラス面に水を流す事で窓面で-10℃、室温で-2~-3℃を実現するという新しい冷房システムです。流水には雨水を地下のタンクに貯めて使用します。

夏は床下の涼しい空気を2階へ、冬はサンルームで暖めた空気を1階へ送る空気循環システムで、年間を通じて室温の安定化を目指します。太陽光発電も組み合わせたエコなシステム。

2色使いが印象的な和室。普段は引き込み戸を全開にしてサンルームの一部、来客時には閉じて客間になります。南面の丸窓は伝統的な“書院”のイメージです。

腰壁が懐かしい寝室。隣にはロフト付きの広いウォークインクローゼット。いずれにも複数の出入り口を設け、自在な動線を実現しています。

建築家のプロフィール
連健夫(むらじたけお)
1956年京都府生、多摩美術大学卒業、東京都立大学大学院修了、建設会社10年勤務の後、胃の手術がきっかけとなり、1991年渡英、AAスクール(ロンドン)留学、AA優等学位取得の後、同校助手、東ロンドン大学講師、在英日本大使館嘱託を経て1996年帰国、連健夫建築研究室一級建築士事務所を設立、設計活動の傍ら、首都大学オープンユニバーシティー講師や赤坂子供建築ワークショップなど教育に関わると共に、「生田緑地将来計画」における市民参加のまちづくりの座長を務めるなどまちづくりにも関わる。
作品に「ルーテル学院大学新校舎」で2006年度日本建築家協会優秀建築選、「はくおう幼稚園おもちゃライブラリー」で栃木県建築景観賞、こども環境学会デザイン奨励賞受賞、提案論文「信頼される建築とは何か」で最優秀賞受賞(兵庫県主催)、著書に「心と対話する建築・家」「イギリス色の街」、共著に「対話による建築、街育て」など

連健夫建築研究室
所在地 東京都港区赤坂4-2-11エフビームス003
電話 03-5549-9887
FAX 03-5549-9889
E-mail takeo@muraji.jp
URL http://www.muraji.jp/

建築家の一言
施主の川谷氏は高校の先輩、同窓会での出会いを通じて設計を依頼されました。
希望は、ご主人と奥様の趣味が多彩で、それらを楽しむことができる家というのがポイントでした。
子供が巣立ち、次のライフステージに向かっての建替えでした。
既存建物の調査で感じたことは、趣味の道具や材料が沢山あることでした。また駐車場を通ってのアプローチを改善したいと思いました。施主の無意識における嗜好や要望を知るべく、施主にコラージュを作ってもらいました。そこから感じ取れたキーワードは、「上昇性、連続性、対象性、抜ける眺望、意外性、ちょっとお茶、窓から見える自然」などでした。この中で、夫婦の関係、自然との関係、地球への関係、すなわち地球に優しい省エネ建築を作りたいと思いました。施主も省エネへの思いは強く、それを是非実現させたいと思いました。
そこでコンセプトは、「広がりがある空間で分割が楽しめる家、空が見える家」としました。
具体的には、1階にはリビングダイニングを中心に諸室を配し、2階にはサンルームを中心に諸室を配する計画としました。メインテーマは【2階サンルームの家】です。サンルームの床をガラスにすれば、1階からも空を見ることが出来る。また、ガラスに貯留した雨水を流せば、打ち水効果から夏季は、涼むことが期待でき、水の流れの潤いを楽しむことができる。更に、縦ダクトを用いて、1階床下の冷気を2階諸室に送付し、冬はサンルームで暖められた空気を1階の諸室に送るシステムを構築することにしました。このことにより、地球に優しい省エネ住宅ができたと考えています。また、川谷氏は仕事は建築ではありませんが、一級建築士を持っておられ、収納やオーディオなどは自ら設計されました。ある意味、施主と一緒に創った感じがあります。
出来上がって嬉しかったことは、奥様が1階のキッチンから2階サンルームのガラス床を通して、空が見えた時の笑顔です。ご主人のコラージュの真ん中に貼ってあった奥様の笑顔への想いが反映できたのではないかと思いました。
渡辺篤史の感想
外観は町並みに溶け込む抑えたデザイン。しかし、内部は創意工夫の塊です。その中心は2階のサンルームです。大きなガラス面を滝のように水が流れ落ちます。環境に配慮した設備なんですが、癒し効果とでも申しましょうか、気持ちの良さも同時に生み出しています。子育てを終えたご夫婦の人生の第2ステージを楽しくしてくれる建物。建築家の心使いを感じます。