放送したお宅
2011年10月14日(金)放送
東京都三鷹市・池田邸
− 崖地に寄り添う“く”の字ハウス −

2010年12月

敷地面積 86平米 (26坪)
建築面積 36平米 (11坪)
延床面積 93平米 (28坪)
RC造
建築費:2514万円 坪単価:89万円



2m以上の高低差を持つ崖に寄り添うような細長い敷地。擁璧を兼ねた鉄筋コンクリート造とすることで室内空間の最大化とコストの最小化を両立しました。

道路側には杉板の縦格子を取り付けてプライバシーを確保。コンクリートの外壁も杉板を型枠に使った、板目を映した仕上げ。背後の竹林と相まって、優しい表情です。

屋上テラスを含めて5層のスキップフロア。4層目のLDKの広さは約11畳。外観の特徴である杉の縦格子は内側を白く塗装しているため、室内からの印象が明るくなります。

T字路の突き当たり、しかも前面道路が家の前で“く”の字に曲がっているため、視線の抜けが多く開放感があります。天窓には背後の竹林が覆い被さってくるような迫力。

台所は限られた空間でも広く使えるオープン型。シンクの背後にも収納が多く採られ機能的です。炊飯器用の収納には湿気センサー連動の換気扇も付いています。

屋上テラスは周囲の壁を高めに設定して、住宅地の直中にあるながらもプライバシーの確保された空間。幅1.9mと、この建物の最も幅の狭い部分ですが開放感は抜群です。

LDKと同じフロアにある水回り。窓外の縦格子がプライバシーの確保と開放感を両立しています。LDKから半階下りた子供室には、作り付けの2段ベッドがあります。

LDKの真下が寝室。広さ約9畳の変形6角形の部屋です。玄関と同じフロアには広さ約14畳の床下収納を設置。天井高1.4mで床面積には算入されない巨大収納庫です。

建築家のプロフィール
森 信人
1957年 宮崎県生れ
1975年 鹿児島県立甲南高校卒業
1981年 横浜国大工学部建築学科卒業
1981年 岡田新一設計事務所
1982年〜 新居千秋都市建築設計
1991年 スタジオ・ノア設立
現在 スタジオ・ノア代表取締役

株式会社スタジオ・ノア
所在地 東京都武蔵野市吉祥寺南町1-30-1 パークウ゛ィラ吉祥寺204
電話 0422-24-8283
FAX 0422-24-8284
E-mail n.mori@myad.jp
URL http://www.s-noa.jp

建築家の一言
井の頭の家 〜記憶の形〜
建物が建つ前は崖になっており、巨木が覆って鬱蒼とした場所でした。
この建物は崖のための擁壁を兼ねています。
コンクリートの躯体は杉板の木目が写し取られ、それと呼応するように杉板ルーバーで覆っています。
伐採された木々の魂をRCの型枠やルーバーを使って蘇らせています。
土地の記憶を形にしてみました。
夜には杉板の縦格子からの明かりが不思議な風景を作り出しています。

ここはご夫婦+子供2人の若いご夫婦の住まいです。
ご主人は不動産屋さんの二代目で、この敷地はもともとお持ちの場所でした。
果たして建物が建つかどうか、当初は賃貸として人に貸す予定だったようです。
床下収納付きスキップフロアのこの住宅は変形した敷地形状のためか、狭苦しさは感じないようです。
南側隣地のモウソウチクは建物を覆う高さまで伸び、トップライトや窓越しに自然の表情を見せてくれています。
人工物には変わりないですが、建築というより土木構造物的な雰囲気を感じさせる家になりました。
渡辺篤史の感想
最も狭い所は幅2mほどの細長い敷地。しかも、背後には崖の迫り、中ほどで“く”の字形に折れています。一見コストのかかりそうな鉄筋コンクリート造ですが、背後の崖の擁璧を兼ねる事で全体のコストを抑える事に成功したそうです。そして、それだけでなく、杉板を映したコンクリート、木部、そして背後の竹林が三位一体となって街に優しい表情を加えています。そこが何よりも素晴らしいと思います。