放送したお宅
2011年7月29日(金)放送
東京都世田谷区・不破邸
- 草屋根と籾殻壁の家 -

2006年4月

敷地面積 155平米 (48坪)
建築面積 62平米 (19坪)
延床面積 123平米 (38坪)
重量鉄骨造
建築費:3800万円 坪単価:100万円



緑に覆われたように見える建物。外壁は石灰に籾殻を混ぜた材料を版築という伝統工法で仕上げました。廃棄される予定だった籾殻を断熱性・調湿性に優れる建材として再利用しています。

1階は、玄関を兼ねたアトリエ。ご主人は、建築家兼大工とあって、PCや書類と並んで様々な大工道具も置かれています。もちろん、この建物の施工にも参加しています。

1階の一部は賃貸スペースとして利用。背の高い生垣に囲まれ、築山もある前庭は、住宅街とは思えない空間。屋内からも緑が楽しめるよう、横長の窓を低めに設置しています。

2階が居住スペース。1階の庇の上、窓の高さに土を盛って草を生やしました。この名付けて“飛庭”が前面道路からの視線をカットするのでカーテン要らずです。

LDKの広さは約18畳。家具、窓の下辺、“飛庭”の高さを揃え、空間の連続感を演出します。対面式の台所はブラインドで隠す事もできます。

水回りは全て石灰仕上げ。表面を石で磨き上げるモロッコの伝統技法=タデラクトです。浴槽横のスリットからは“飛庭”が、全面の天窓からは空を眺められます。

2階東側は寝室。ここでも“飛庭”を楽しむことができます。屋上への出入り口が設けられています。

野草が生い茂る屋上。土の深さは約40cm。断熱性・遮熱性を向上させると同時に身近に楽しめるアウトドア空間を実現。昔懐かしい原っぱの風情です。

建築家のプロフィール
不破博志
1973年 サンフランシスコに生まれる
1979年 日本東京都世田谷区で過ごす
2000年 日本神奈川県鎌倉市で過ごす
2004年 日本東京都世田谷区在住
学校
1992年-1996年 横浜国立大学 工学部 建築学コース
1996年-1997年 東京芸術大学 大学院 美術学部 建築学科
その後大工修行。
現在に至る。

不破博志一級建築士事務所
所在地 東京都世田谷区成城7-5-9または成城2-15-13
電話 03-6411-2938または03-3416-1134
FAX 03-6411-2938または03-3416-1134
E-mail info@fuwahiroshi.com
URL www.fuwahiroshi.com

建築家の一言

「もみがら石灰の版築壁」
ハチの巣をみて思った。
ハチの巣は、ハチにとって、気持ちがいいのだろう、と…。
では人は人の生活をなにで包むか?
身に纏う衣服と同じで、四季折々、気持ちのいい材料で包まれたいだろう。
気持ちがいい衣服は、「断熱性」「蓄熱性」「調湿性」のバランスのいい材料でできている。
ここでは
「もみがら」に「断熱性能」、「石灰」「土」に「蓄熱性能と調湿性能」をもたせてた。
(もみがらは水に強く、腐りにくい。石灰は、雑菌・カビ・腐食から木材を守る役割もある)
高断熱高気密以外の、選択肢として確立できた事と思う。
「飛び庭」:
日本人の大人が都会で昔から持ち合わせていた世界観とは…。
その世界観の一つが、「坪庭」や「盆栽」など、自然を四角く切り取った世界。
その世界観を現代の立体的な都会に持ち込んだものを「飛び庭」として表出させた。
「飛び庭」を建物から突き出す「出」の奥行きで、道路からの視線を遮る。
また、下階(この家では、1階)の、開口部の「雨除け・日除け」にもなる。

「甘くならない自然素材の使い方」
木の良さの一つは、「優しくて、温かい」、一面である。
ただし、空間全体が「甘すぎる」感じになってしまうのを、避けるよう寸法の決め方に気をつけた。
具体的には、窓枠・家具・飛び庭の「高さ」を食卓の高さに合わせることで対応できた。

渡辺篤史の感想
籾殻と石灰を混ぜた版築壁、本場モロッコの工法で仕上げた石灰の水回り。堅牢な鉄骨で骨組み枠を造り、それを自然素材で包み込んだ建物です。さらには2階の窓辺、屋上という通常あり得ない場所に、たっぷりの緑があります。初めて見るのに不思議と懐かしさを感じますが、ノスタルジックな建物ではありません。省エネルギーやサステイナビリティに配慮した、これから未来の建物だと思います。