放送したお宅
2011年5月27日(金)放送
茨城県守谷市・中山邸
− 大屋根の下に集う家 −

2010年2月

敷地面積 205平米 (62坪)
建築面積 65平米 (20坪)
延床面積 101平米 (30坪)
木造在来工法
建築費:2675万円 坪単価:88万円



低く構えた大屋根、ヒンプン(屏風)を思わせる壁が、沖縄民家のような風情を感じさせる外観。南は道路、北は遊歩道に面した立地です。

ポーチ〜玄関土間〜上がり框は全てテラコッタタイル貼り。正面の引き戸は収納。向かって右のガラス戸から室内へと向かいます。

最初の部屋は打ち合わせ室。仕事以外の用途も多い多目的空間となっています。床はポーチから続くテラコッタタイル貼り。壁はシラス(火山排出物)を原料とする薩摩中霧島壁です。

南北に抜けのある居間・食堂。テラスに面した南面の掃き出し窓、遊歩道に面した北面の窓、共に引き込み式のガラス戸・網戸・障子の3重の戸となっています。

台所カウンターの手前にTV台をビルトイン、AV機器を納めた棚の引き戸はリモコンの赤外線を透す簾戸にするなど、造作家具デザインにも細かな配慮が感じられます。

L字形に配置された台所カウンター。隣接する位置に家事コーナーを設けています。1階トイレ近くに、愛犬のための部屋もあります。

2階ホールは打ち合わせ室の吹き抜けに面しています。デスクを設置して書斎としても使われます。主寝室は琉球畳を敷いた和室。窓枠は座れるよう低めに作られています。

浴室にはハーフユニットバスを採用し、天井・壁を椹(サワラ)張りにしました。遊歩道に面しているので、木々を眺めつつ入浴できます。

建築家のプロフィール
伊礼智
1959年 沖縄県生まれ
1983年 琉球大学理工学部建設工学科卒業
1986年 東京芸術大学美術学部建築科大学院修士課程修了
1986〜96年 丸谷博男+エーアンドエー
1996年 伊礼智設計室設立
現在、日本大学生産工学部居住空間デザインコース非常勤講師

伊礼智設計室
所在地 〒171-0031 豊島区目白3-20-24
電話 03-3565-7344
FAX 03-3565-7344
E-mail irei@interlink.or.jp
URL http://irei.exblog.jp/

建築家の一言
1. 佇まい再考
この家を設計し始めた頃だったと思います。沖縄の伊是名島へ二十数年ぶりに出かけました。その時に久しぶりに見た「銘苅家」の素朴で簡素で、地味でありながら、その品の良さ、佇まいの美しさが心に残りました。「佇まい」とは何か?を考え直すきっかけになる。
「佇まい」は英語で「atmosphere」、雰囲気、大気、空気、惑星を包むガス帯の事。
「良い佇まい」は建築、環境、設備、素材などの
様々な要素のバランスの良さから醸し出される、つくり手(設計者、施主を含む)の「良い意志」が現れるではないかと思います。
「佇まい」は住まいを包み込むオーラのようなもので、「良い佇まい」はその地の空気となって建築を包み込む。斬新さや新しい建築でなく、感じのよい、嫌みのない住まいの魅力を再認識しました。
近所に負荷を与えない、嫌みがない、小振りに配置する…そんなことを心がけながら設計しました。北側の遊歩道がこの環境の宝です。
この緑が南側からも突き抜けて見えるといい… 住宅の壁で視線を遮るのではなく、周辺に開放する。設計当時は遊歩道の木は背が高くて、南側からも屋根の上に木が見えるといいなあと思っていたら、工事中に切られてしまい(笑)、残念。そんな事を考えて取り組んだら、こじんまりした感じのいい住まいになったように思います。

2.この住まいの環境システム
この住まいの設備設計の目標はハイテクとローテクをうまくバランスさせること。
ハイテクの設備として、燃料電池を搭載しています。
次世代のシステムとしてメーカーの協力を得て、モニターとして搭載しています。お湯と電気を同時にこの家で創り、送電ロスを減らし、
ライフスタイルに合わせ、必要なだけのエネルギーを創り出しています。
渡辺篤史の感想
南傾斜の大屋根に包まれた日本民家を思わせる建物です。遊歩道に面した立地を生かした視線の抜け、機能一辺倒ではない空間の余白が、広さや安らぎを感じさせます。多くの友人・知人が集まる場所にしたかったという、もてなしの心が形になった建物、ご家族の人柄が感じられる楽しい建物です。