放送したお宅
2011年4月15日(金)放送
神奈川県鎌倉市・日置邸
− 竹林にとけこむ屏風壁の家 −

2011年4月

敷地面積 115平米 (35坪)
建築面積 44平米 (13坪)
延床面積 86平米 (26坪)
木造
建築費:非公開 坪単価:非公開



竹林に面した東面の外壁は土壁風に見えるモルタル掻き落とし仕上げ。ギザギザと屏風状になっています。窓の庇や建具も屏風状の壁に合わせ「へ」の字形になっています。

玄関は、ポーチから土間は大谷石に似た質感の関東石(中国産)敷き。正面の青い壁は、漆喰クリームに大理石粉を混ぜて塗って磨き上げた「イタリア磨き」と呼ばれる仕上げです。

1階LDK。東面の壁は外壁の形を反映して屏風状。割竹を組んだ「竹小舞(たけこまい)」と呼ばれる下地に藁入りの土を塗った伝統的な土壁です。小上がりは奥さんの書斎。

屏風壁にデザインを合わせた照明器具、食卓、スタッキングスツールは、建築家である建主の息子さんが設計し自らの手で製作した物。

屏風壁に合わせて台所カウンターも雁行します。天板は御影石。たっぷち採られた収納の扉も息子さんが製作した物だそうです。

洗面室の出入り口は押しても引いても開くスウィング・ドア。浴室は床の一部にヒノキの簀の子を張っています。入浴しながら裏庭の植栽が楽しめます。

2階の天井は土壁と和紙でパターンを描いています。和紙部分は、やはり息子さんが自ら施工しました。2部屋のうち南側はご主人の書斎。

2階北側は主寝室。土壁と和紙のパターン天井は欄間を通じて、ご主人の書斎と繋がっています。ここにも和紙で作ったオリジナルの照明器具があります。

建築家のプロフィール
日置 拓人(ひき たくと)
1993年 早稲田大学理工学部建築学科卒業
1995年 イタリア政府給付生
ローマ大学建築学部留学
1996年 早稲田大学大学院理工学研究科建設工学修士修了
1996年 左官職人久住章氏に師事
淡路島ゲストハウス製作
1999年 一級建築士取得
南の島工房設立
2000年 明石高専非常勤講師
2001年〜2004年 明治大学理工学部建築学科兼任講師
2007年〜2010年 早稲田大学理工学部建築学科非常勤講師

南の島工房一級建築士事務所
所在地 〒182-0035 東京都調布市上石原3-14-6
電話 042-446-1015
FAX 042-446-1015
E-mail minaminoshimakobo@gmail.com
URL http://www.minaminoshimakobo.com/

建築家の一言
現代の機能的な社会の中では、土と木を使った空間は、人に優しさと居心地を提供してくれえます。家作りは自動車のように大量生産を前提とした性能で判断するのではなく、住み手の生活に基づいてひとつひとつデザインしていくものです。その意味ではローテクの集合体といえるでしょう。
そして、職人だけが、家作りを行うのではなく、施主、設計士も一丸となって取り組んでいくことが、住み心地のいい家ができるポイントいえるでしょう。
渡辺篤史の感想
鎌倉の谷間の緑豊かな立地に、周囲の景観に溶け込む落ち着いた風合い。ご両親のために建築家である息子さんが一所懸命設計し、所々自らの手で施工まで行ってできた建物です。屏風状の壁は個性的ですが、これによって屋内の奥行き感が増しているように思います。そして伝統工法を生かした左官仕上げは肌触りがやさしく、ここに身を奥と清々しい気分になります。