放送したお宅
2010年12月24日(金)放送
埼玉県三郷市・岡田邸
− コンクリートの“大樹”の下で −

2010年3月

敷地面積 200平米 (61坪)
建築面積 118平米 (36坪)
延床面積 130平米 (39坪)
鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
建築費:非公開 坪単価:非公開



箱形のシンプルな外観・・・に見えて、壁面をキャンティレバー状に支えて、地上から約20cm浮いているように見せています。外壁は繊維強化セメント板。

屋内に入ると、中央に上方に向かって傘状に広がるコンクリートの構造物が見えて来ます。大樹を思わせる、この建物を支える構造体。4方に天窓が開けられています。

玄関に最も近い位置。"大樹"の北側にある和室。藤壷のような形の造作照明にはアーティストpinpin co氏の手による壁画=ラインアートが描かれています。

"大樹"の西側に台所。カウンターは土台から立ち上がったコンクリート製。背面の収納にはエアコン、冷蔵庫も収納して生活感を排除します。

南西角の食堂と南側の居間は置き家具で仕切ります。南面の大きな窓はフィックス。食卓近くの壁にもラインアートが描かれています。

北東角の主寝室。出入り口の引き戸はコンクリートの"大樹"の形に合わせて曲線になっています。将来子供室になる予定の部屋は天井がグレーチング。

将来の子供室の上はフリースペース。そこから2階の水回りへと続く階段は、敢えて暗い色で塗装して、浴室に到達した時の開放感を強調します。

屋上庭園に隣接した露天風呂のような浴室。コンクリートの構造体は漏斗状になっていて大地へと繋がっています。この庭では、将来、周囲が建て込んだとしてもプライバシーが完全に守られます。

建築家のプロフィール
塚田修大
1969年 千葉県生まれ
1993年 東京理科大学理工学部建築学科卒業
1995年 早稲田大学大学院修士課程修了
1996年 コロンビア大学大学院修士課程修了
1996〜2000年 伊東豊雄建築設計事務所
2001年〜 塚田修大建築設計事務所
現在 東洋大学、早稲田大学非常勤講師

塚田修大建築設計事務所
所在地 〒160-0015 東京都新宿区大京町26 FujiCoop 401
電話 03-6380-5840
FAX 03-6380-5841
E-mail guest2@ts-ar.com
URL http://www.ts-ar.com/

建築家の一言
2階レベルに「本物」の土の庭がある住宅です。本来なら1階に無ければならない土の庭が、2階にあっても良いじゃないか、という発想からできています。ただし、ルーフガーデンのような「フェイク」の庭でなく、あくまでも「本物」の土の庭。そのために住宅の中央に漏斗状の形をしたRCの構造体を置き、その中に本物の土を詰めて地面と直接連続した「本物」の土の庭を2階レベルに作っています。「本物」の土の庭ですから、普通の1階の庭でできることは何でもできます、根付きのある大きな木だって植えることができます。そんな庭には浴室から直接アプローチすることができ、内部空間と一体的になった気持ちよい使い方が出来るよう計画しています。
内部空間はそのRCの構造体の「傘の下」に展開します。RCの構造体の周りをぐるりと巡る円環状の空間、そこに各居室が配置され、互いにつながりながらも距離感のある関係を生み出しています。RCの構造体は空間にある種の力強さを生みながら、丁寧に開けられた開口部が住空間の豊かな質を作り出し、全ての意味でこの住宅の主題となっています。
渡辺篤史の感想
外観はシンプルな箱形なんですが、一歩中に入って驚きました。コンクリート打ち放しの大樹あるいはラッパのような巨大な構造物が中央に鎮座しています。この構造体は筒状になっていて、地上4mの高さに新たな大地=屋上庭園を支えています。そして、その庭を楽しみながら入浴できる浴室は、なんとも贅沢な居場所です。
この大胆な発想をした設計者も素晴らしいですが、それを許した建主もまた素晴らしいと思います。