放送したお宅
2010年11月26日(金)放送
東京都港区・
- 都心で暮らすガラスの家 -

2010年4月

敷地面積 50平米 (15坪)
建築面積 29平米 ( 9坪)
延床面積 116平米 (35坪)
鉄骨造一部RC造
建築費:非公開 坪単価:非公開



都心のビルの谷間に立つ小さな塔状の建物。隣接建物に面していない北・西の2面は全面ガラス張り。窓枠は精度の高い溶接技術を持つ造船技術者によって造られました。

地階は、共に建築家である夫婦のアトリエ。地表から約1.1m掘り下げた空間ですが、ポーチに面した大きなガラス開口が開放感を演出します。

アトリエと居住空間の間にオレンジ色のドアを設置し、公私を区別。階段の蹴込板が開閉し靴収納になっています。

1階はLDK。道路を挟んだ向かいの寺院の庭を借景します。南端にある台所からは階段室の吹き抜けと向かいの緑が同時に視界に入り、広がりを感じさせます。

コの字形の台所カウンターは90cmと高めに設定。主体構造が鉄板のため、天井・壁はどこでも磁石が付く“掲示板”状態。様々な装飾が楽しめます。

ガラス張りの外観を実現している要因の1つが階段。主体構造の一部である階段は、壁とは切り離されていて、その隙間から下階の明かりが漏れて来ます。

水回りは2階。洗面室・浴室とも階段の吹き抜けに面しています。浴室の天井の斜めにカットは、洗面室の天井を広く見せるためのデザインです。

個室は2階に1つ、3階に2つ設けています。3階の北側の部屋は、大きなガラスを透して階段室の吹き抜け、さらには屋外とも視覚的に繋がります。

建築家のプロフィール
高柳英明+高柳寛子
早稲田大学理工学部建築学科卒業、早稲田大学大学院理工学研究科修了、同大学院博士後期課程にて2003年3月博士(工学)取得。株式会社博報堂スペースデザイン事業局プラナー、株式会社フレックスリンク取締役、国立大学法人千葉大学助手を経て、2005年株式会社高柳英明建築研究所設立、以後顧問を務める。
2006年より公立大学法人滋賀県立大学 准教授、環境科学部環境建築デザイン学科・大学院環境科学研究科において教鞭を執る(専攻:建築デザイン、建築計画)。
ちば地域再生リサーチ理事、2000年日経サイエンス論文賞受賞、2008年都市住宅学会賞 受賞。

株式会社高柳英明建築研究所
所在地 東京都港区三田5-15-1
電話 03-6450-4128
FAX 03-6450-4128
E-mail info@hideakitakayanagi.jp
URL http://www.hideakitakayanagi.jp

建築家の一言
敷地は間口7.2mで北側7m道路に接道、通りの向かいには緑深い寺院を臨んでおり、恵まれた立地環境である一方で、敷地形状は、敷地三方を隣地に囲まれた「狭小」かつ極めて「不整形」なかたちをしています。
狭小空間を効率的に利用すべく、鋼板サンドイッチプレートによる鉄骨構造とし、土地の不整形さを逆手にとり建物の外周に階段を設けることで、居住空間と外部をゆるやかに繋げる「立体縁側」に仕立てました。
街に向かって「立体縁側」を開くべく、北側・西側は全面スチールカーテンウォールになっており、スパイラルには所々開口があいていて、居室と繋がっていたり、吹抜に接した斜めの腰壁をなしています。そこは、イスを置いて眺望の良い読書室として使えたり、日当たりの良い子供の遊び場になったり、収納スペースであったり、建築照明であったりと、様々な豊かさの空間を作り出します。
この家は、このような限られた条件の土地に対して、豊かな空間と合理的な構造を同時に追い求めた都市住宅のひとつのモデルとして計画いたしました。
渡辺篤史の感想
建築面積わずか9坪の都市住宅ですが、大らかな空間になっています。その大らかさを生んでいるのが、しっかりした構造。折り畳まれた鉄板が内部から支えてくれるおかげで、大胆なガラスのファサードが実現しました。
また、そんな大胆な開口を造りたくなる環境も素晴らしい。わずかながらも残された緑を上手く借景して暮らす。これからの都市生活の一つの理想かも知れません。