放送したお宅
2010年11月12日(金)放送
東京都・榊原邸
- 花びらのように並ぶ5つの箱 -

2009年2月

敷地面積 169平米 (51坪)
建築面積 69平米 (21坪)
延床面積 105平米 (32坪)
木造
建築費:2696万円 坪単価:85万円



大小の黒い箱を十字形あるいは花びら形に並べた建物。外壁はガルバリウム鋼板の波板です。両親の家に隣接した敷地なので庭の一部を共用しています。

1つ目の箱は玄関ホールと水回り。玄関ホールは中央に収納を置き、2方向に上がり框があります。階段室を中心に360度回遊する動線が確保されています。

2つ目の箱は居間。他の「箱」と互いに少しずつ領域が重なり、繋がりながら同時に独立した感じも演出します。床高を低めにして庭との一体感を高めます。

3つ目の箱は和室。大きな4枚の引き戸で完全に個室化する事もできます。客間を想定して作られましたが、現在はお子さんの遊び部屋兼家族3人の寝室です。

4つ目の箱は食堂。居間と同様、上階や他の部屋との繋がりが感じられます。天窓や高窓がプライバシーを守りつつ採光します。

5つ目の箱は台所。食堂から独立しつつも繋がっている印象もある“半独立型”です。コの字形レイアウトにして動線をコンパクトに収めました。

4つの箱に囲まれた“隙間”が階段室。壁に外壁と同じ素材を張り、上部はパンチングメタルとアクリルの明かり取りなので、移動の度、外に出たように感じます。

和室の上階は子供室、玄関ホールの上階は主寝室です。子供室は現在は書斎として使っています。寝室は和室と同様、引き戸で個室化できます。

建築家のプロフィール
駒田剛司、駒田由香
駒田剛司
1965年 神奈川県生まれ
1984年 英国立教学院卒業
1989年 東京大学工学部建築学科卒業
1989年 香山壽夫建築研究室
1995年 東京大学工学系研究科 建築学専攻助手
2000年 有限会社 駒田建築設計事務所 共同設立
東京工芸大学、昭和女子大学 非常勤講師

駒田由香
1966年 福岡県生まれ
1984年 福岡県立修猷館高校卒業
1989年 九州大学工学部建築学科卒業
1989年 東陶機器株式会社システムキッチン開発課
1993年 サティスデザイン株式会社
1996年 駒田建築設計事務所 設立
2000年 有)駒田建築設計事務所 共同設立
中央工学校講師 講師

有限会社 駒田建築設計事務所
所在地 東京都江戸川区西葛西7-29-10 西葛西アパートメント401
電話 03-5679-1045
FAX 03-5679-1046
E-mail komada@ppp.bekkoame.ne.jp
URL http://www.komada-archi.info

建築家の一言
杉並区に建つ3人家族のための住宅です。親世帯がある敷地の一部を分筆し、子世帯の住宅を建てることになりました。 高さの違う5つの小さな箱がランダムに寄り集ったような形は建物の裏と表を消し、全体のスケール感を抑えています。背面に建つ親世帯に対して建物の裏の表情を見せず、小さな箱と箱の隙間は緑化されて、周囲に対して潤いのある風景となるよう配慮しました。 1階は広さや天井高さの異なる5つのスペースが寄り添うように繋がり、中央の階段室や2階の個室とも視線が通いあう一体的で複雑な場を創りだしています。
渡辺篤史の感想
屋外のような階段室を中心に各部屋をクチナシの花弁のように配置した建物。各部屋の窓の穿ち方が特徴的です。空を見る窓、庭を見る窓、そして隣の部屋とのコミュニケーションの窓。設計は薄い紙を丁寧に重ねるような繊細な作業だったのではないでしょうか。建主と家族構成が同じの建築家夫婦が持てる技を駆使し、人生の先輩として後輩に送ったメッセージ。この建物は、そんな風にも感じます。