放送したお宅
2010年10月29日(金)放送
東京都杉並区・山邸
- “外階段”が結ぶ3つの塔 -

2009年9月

敷地面積 118平米 (36坪)
建築面積 59平米 (18坪)
延床面積 138平米 (42坪)
木造 一部 鉄筋コンクリート造
建築費:3800万円 坪単価:90万円



広さ・高さの異なる3つの塔を、屋外空間のような廊下・階段室が繋ぐ構成。岩石を思わせる仕上げの外壁に合わせ、南の庭には大きめの石を入れています。

内壁を外壁と同じ仕上げにして玄関・階段室を屋外のように感じさせます。3つの塔は少しずつ角度をずらして配置しているため遠近感が強調され、広がりを感じます。

北棟の2階は食堂・台所。住宅街ながら緑豊かな環境であり、その緑を借景できるように窓を配置。食卓に座ると、住宅街とは思えない景色が広がります。

食堂と一室の対面式台所は生活感を見せないよう、背面の収納に冷蔵庫まで収めました。天井をすっきりと見せるため、吊り戸棚を排し、換気扇も壁に設置しています。

南東棟の2階は居間。こちらも近隣の緑を借景できるよう窓を配置。この南東棟のみが3層で他の2棟は2層とし、螺旋状に上り下りする動線が作られています。

南西棟2階は子供室。高い位置に階段室に繋がる扉を設け家族の一体感を高めます。子供たちは、ここを“近道”として利用。南東棟1階は予備室です。

南西棟1階は水回り。洗面室と浴室の床・壁・天井の仕上げを統一して広がりを演出。浴室の地窓からは入浴しながら坪庭を眺めることができます。

北棟1階は車庫。ご主人自ら簡単な整備を行うため、リフトやコンプレッサーを設置しています。自転車やスキーも収め“趣味室”の様相。南東棟地階は主寝室です。

建築家のプロフィール
森清敏 + 川村奈津子
森 清敏
1968年 静岡県生まれ
1987年 長野県立長野高等学校卒業
1992年 東京理科大学理工学部建築学科卒業
1994年 同大学院修士課程修了
1994~03年 大成建設株式会社設計本部
2003年~ MDS一級建築士事務所共同主宰
2006年~ 日本大学非常勤講師
2009年~ 東京理科大学非常勤講師
2010年 株式会社MDSに改組

川村 奈津子
1970年 神奈川県生まれ
1994年 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業
1994~02年 大成建設株式会社設計本部
2002年 MDS一級建築士事務所設立
2010年 株式会社MDSに改組

(株)MDS
所在地 東京都渋谷区代々木5-8-6-502
電話 03-3465-6648
FAX 03-5941-8590
E-mail info@mds-arch.com
URL http://www.mds-arch.com

建築家の一言
緑溢れる閑静な住宅街の街並みに対して圧迫感の少ない佇まいとなるように、変形した敷地に沿って居室を3つの箱に分割、配置しました。結果として、外周面積は広くなり、窓を多く設けることが可能となるため、それぞれの居室において2方向以上の通風と採光が可能となります。
住宅においては付かず離れずの個々の距離感、「不即不離」が重要です。3つの箱が寄り添って生まれた隙間空間は、適度な距離感を生み出す「間」となりつつも、そこに接するそれぞれの箱の開口部によって一体空間とも取れる「間」となり、屋内のような屋外のようなどちらにも成りうる場となっています。また、地下から塔屋まで上下に抜けたこの部分は、自然対流による通風、採光に役立っています。  
箱と箱の隙間を通り抜け、歩きまわる度にあちこちに開けられた開口部より様々なシーンが展開し、四季の移ろいを感じられる空間となっています。 照明計画は、戸恒浩人氏によるものです。
渡辺篤史の感想
緑豊かな住宅地。その街並みに映える岩を思わせる外観です。建物は3つの塔で構成され、その隙間を透明感のある階段室が結びます。部屋から部屋へと移動する度、一旦外に出たような感覚を味わえます。これによって、それぞれの部屋の独立性を高めつつ一体感も失っていません。巧みなデザイン。刺激を受けた建物です。