放送したお宅
2010年10月22日(金)放送
東京都杉並区・黒田邸
- 台所に住む!? -

2009年12月

敷地面積 67平米 (20坪)
建築面積 39平米 (12坪)
延床面積 95平米 (29坪)
木造 一部RC造
建築費:2400万円 坪単価:74万円



間口4.5m×奥行き8.5mの建物。正面の黒い壁は、コテ塗りと櫛引き、2種類の仕上げを交互に施しています。玄関土間は、ピンク色の丸タイル敷き。

玄関を入ってすぐに現れる広い台所。料理教室を主宰している奥さんのための仕事場でもあります。スキップフロアで他階と空間を繋ぎ、限られたスペースで広がりを演出。

2.1m×1.1mの大きな作業台は、8人の生徒さんが同時にまな板を並べて作業できる事を念頭に決められました。この作業台を含め、造作家具はご主人の建築学科の同級生が製作しました。

台所から半階上がった食堂。掘り炬燵式の食卓は、料理教室の“試食会場”としても使用されます。天板は床と同じオーク材で、床が持ち上がって食卓になったようです。

食卓上のペンダント照明はステンドグラス作家の作品。食堂の一角に腰壁で仕切って書斎コーナーを設けました。最上階は“サロン”と名付けられた11畳大の居間。

料理教室の際は、台所・食堂そして居間までがパブリックスペースとして使用されます。居間に隣接したバルコニーには、料理教室でも使用できるハーブを育てています。

ドアの“2番”が目印のトイレは、生徒さんが利用することも考えて台所の近く、広めに設計。色鮮やかなイタリア産タイルが目を引きます。

プライベートスペースである水回りと寝室は半地下で、引き戸で閉じる事ができます。家具製作は同級生、建物本体は別の同級生とご主人の共同設計ですから、家づくりは同窓会のように楽しかったことでしょう。

建築家のプロフィール
黒田 正博
協力:春原建築設計事務所
1968年生まれ 東京都出身
1991年 日本大学生産工学部建築工学科卒業
1991年~ 株式会社 松田平田設計

E-mail mshr96@tulip.ocn.ne.jp

建築家の一言
「自宅で料理教室を行う」この為に作った家です。
家の中心にキッチン―
玄関を開けてすぐの場所に隠さず配置。必ずキッチンを通らなければどこにも行けません。
顔が見え、声が聞こえる断面的なワンルーム―
各室を壁で囲わず、床の高低差でつなげることで、上下階の見通しを良くし広がりをもたせました。
来ていただいた方に楽しんで料理をしてもらえる家になってくれたらと思います。

渡辺篤史の感想
料理研究家である奥さんのために建築家であるご主人が設計した住宅です。敷地は約20坪、建築面積約12坪、延床面積29坪弱という限られた空間に料理教室の機能を盛り込むために打ち出されたプランは“台所に住む”というものでした。目的が強く大きいものであるほど、形態はシンプルになっていく、そんな印象です。ご夫婦が望んでいた空間を自らの手で見事に形にしましたね。