放送したお宅
2010年9月24日(金)放送
東京都世田谷区・高柳邸
- 古材が生きる家 -

2009年11月

敷地面積 67平米 (20坪)
建築面積 40平米 (12坪)
延床面積 93平米 (28坪)
木造2階建て+ロフト
建築費:2600万円 坪単価:79万円



外周の壁が白いのに対して車庫部分を木張りとする事で、塊から切り取ったような印象を与えます。ポーチから玄関土間まで敷かれているのは、取り壊された中国の築70年の建物のレンガ。

玄関のベンチ、上がり框に使われている木材は、取り壊された島根県の築40年の民家の材。この建物は、古材を様々な場所に利用しています。

玄関ドアの取っ手びは特注の、コートハンガーにはアンティークショップで見付けた、鍛鉄製品が使われています。古材とデザインの親和性が高い物が選ばれています。

2階はLDK。4本の梁は、古材を装飾としてだけでなく、構造材としても利用した意欲作。建主が建築家と共に取り壊し前の屋根裏に上がって選んだ物だそうです。

腰壁、台所の天板、造作収納の天板などにも古材を使用。食卓は丸太材に古材を接木、さらに鉄製の脚を付けて完成したオリジナルです。

洗面所のシンクは、古いお菓子屋さんの銅製こね鉢を利用した物。鏡付きの収納など、古材との調和を考慮した品々が、ここにも選ばれています。

やはり古材に似合う鉄製の梯子を上るとロフト。手前が畳敷きの間、奥が奥様の書斎です。書斎の造作デスクは、もちろん古材です。

1階にある寝室の奥には、隠れるようにご主人の書斎が。こちらの造作デスクも古材です。

建築家のプロフィール
山下保博

1960年生まれ。奄美大島出身。芝浦工業大学大学院修士課程修了。
いくつかの設計事務所を経て、1991年に独立。
2004年、国際建築家新人賞 ar+d award「最優秀賞」、釜山エコセンター国際設計競技「1等」の受賞をきっかけに、海外にも活動の幅を広げた。
芝浦工業大学、東京大学大学院、東京理科大学で非常勤講師を歴任。
現在は、慶應義塾大学大学院 非常勤講師。

その他、ARCHIP ARCHITECTURE AWARD 2008「グランプリ」『チカニウマルコウブツ』(DOMUS出版主催 国際建築賞/ロシア)、平成21年度 日事連建築賞 小規模建築部門 優秀賞(チカニウマルコウブツ)、社団法人 日本アルミニウム協会 平成21年度「日本アルミニウム協会賞 開発賞」など受賞歴多数。

主な著作に、「アトリエ・天工人/素材・構法からの建築」(彰国社/2009)、
「天工人流 -仕事を生み出す設計事務所のつくりかた-」(彰国社/2009)、
新建築住宅特集「天工人本」(新建築社/2006)がある。

一級建築士事務所 株式会社 アトリエ・天工人(テクト)
所在地 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-1-20神宮前フォレストビルB1F
電話 03-6439-5540
FAX 03-6439-5541
E-mail info@tekuto.com
URL http://tekuto.com

建築家の一言
高柳邸は、アトリエ・天工人が推進する「古民家プロジェクト-100+100 Aging-」の一環として、設計しました。
使われなくなった古民家を時代のニーズや構造基準に見合った新たなかたちに編集しなおし、古民家とともに育まれてきた伝統を、次の100年につなげるためのプロジェクトです。

本物件のコンセプトは「時間の継承」です。島根県で使われなくなった古民家の部材を、新しい空間に組み込んで、編集しなおすことによって、一棟丸ごとのリサイクルを実現しました。木材だけでなく、玄関のタイルには、同様に使われなくなった中国の古い煉瓦を使用するなど、ものと一緒に受け継がれる時間が醸し出す空間を感じていただければと思います。日本には、現在100万棟の古民家があるといわれていますが、人口の高齢化・減少によって空き家になったり、時代に見合わないという理由から不要となる古民家は多く、年間数万棟が解体・焼却処分されています。
私は古民家とともに受け継がれてきた時間が、現代社会のこのような理由で失われていく状況をなんとかしたいと思い、「古民家プロジェクト-100+100 Aging-」を立ち上げました。
また、古材の再活用は、実質的な環境保全にもつながります。実際に、日本の古民家を解体し、廃材として焼却時に排出するCO2よりも、移築のため輸送時に排出されるCO2の方が少ないという利点もあります。
私たちは、「古民家プロジェクト-100+100 Aging-」を通じて、日本の伝統を次の世代へ継承していきたいと考えています。
渡辺篤史の感想
建物の大きさは数字では表せません。高柳さんのお宅も狭小住宅のジャンルに入ると思いますが、とても広く、大きく、豊かに感じます。それは、家のあちらこちらに使われた古材が、時間の重みを感じさせてくれるからでしょうか?そして、漆喰、鉄製品、古道具など、古材と一緒にあっても負けない存在感を持つ物が吟味されています。そういった物たちに癒されて、落ち着いて生活ができる建物です。