放送したお宅
2010年8月27日(金)放送
神奈川県横浜市・基邸
- ほとんど「外」の家 -

2009年7月

敷地面積 67平米 (20坪)
建築面積 50平米 (15坪)
延床面積 120平米 (36坪)
鉄骨造
建築費:2780万円 坪単価:77万円



間口5m、奥行き13mの敷地に立つお宅。建築家である奥さんが設計した鉄骨造の住宅です。

1階は土間と客室。3枚の扉を片方に寄せると、土間が駐車スペースになります。客室は地窓で視線を遮りながら採光します。

2階は吹き抜け6.5m、26畳の大空間。壁・天井がガラスのLDK。目指したのは、「外のような家」、暗くなりがちな細長い敷地の弱点を克服しています。

北側はキッチン。全面が擦りガラス。ステンレスのカウンターを置いたシンプルなキッチンです。

リビングは10畳。大きな本棚は、西日を遮る役割もあります。南側は高さ3.4mの大開口。バルコニーと繋がります。

3階は、建築家である奥さんの仕事部屋。北側のロフトには風を通すための窓を3つ設けました。室内の暖まった空気を逃します。

ロフトの下は水回り。洗面室と浴室の間に仕切りを設けず、東西の窓から風を通します。

最上階は寝室。ご主人の希望で寝室は閉じた空間になりました。天窓を含む6つの窓、2つは吹き抜けと繋がります。

建築家のプロフィール
基真由美/M.A.D + 西牟田奈々/SML
基真由美
1974年 東京都生まれ
2000年 武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部建築学科卒業
2002年 武蔵工業大学(現・東京都市大学)大学院
工学研究科修士課程(手塚貴晴研究室)修了
2002~2004年 手塚貴晴+手塚由比/手塚建築研究所
2004年~ M.A.D

西牟田奈々
1976年 埼玉県生まれ
1998年 和田江身子、平田晶と共にSML発足
1999年 法政大学工学部建築学科卒業
2001年 法政大学大学院工学研究科建設工学専攻修士課程(渡辺真理研究室)修了
2002~2004年 手塚貴晴+手塚由比/手塚建築研究所
2006年 SML一級建築士事務所設立

M.A.D+SML
所在地 神奈川県横浜市西区久保町19-7/埼玉県さいたま市浦和区本太5-26-14
電話 045-252-1902
FAX 045-252-1902
E-mail prague2004@s3.dion.ne.jp
URL http//www.sml-arch.com

建築家の一言
間口5m×奥行13mという狭小敷地に、住まい手が要望する「ほぼソト」のような開放的な空間をどう創り上げるか、というのが最大のポイントであった。「ソト」というのは、内部空間にはない余白的なスケール感を持つ空間である。そこで想定ボリュームを立体的に分割し、余白を介入させる手法を考えた。分割された割れ目では視界に入る表面積が増え、ソトに居るかのような開放感が得られる。この時の分割尺度として、触れる、抱えられる、登れる、見上げる、見下ろすなど行為そのものを空間定義とすることで、身体的に感じられるソト感をなくさないようにした。分割されたバラバラのボリュームは、太い幹のような柱が貫き、枝を張って樹とつながったようなフレーム構造として全体を一つに成立させている。それぞれのボリュームに応じた構造が、建築内部に日向と日陰を創りだす。余白である外部の延長のような空間と、ツリーハウスのようなボリュームの関係により、上昇感を得られる空間を目指した。上るほどに楽しい気分になることが「ジョウショウハウス」の名の由来である。
渡辺篤史の感想
間口5m、敷地は20坪のうなぎの寝床のような敷地ですから隣家が迫って暗くなりがちなんですね。どれだけ広く豊かな空間を作るか、試行錯誤の結果が、2階の吹き抜けです。ガラス窓の多さです。とにかく四六時中どこからでも光がやってきて、心も開放されていくようです。この大空間を作るにはしっかりとした構造なんですが、鉄骨の良さがあちこちに出ています。ご主人がわがままな建て主を演じて、これが良い結果を生み出しました。