放送したお宅
2010年8月20日(金)放送
千葉県柏市・山本邸
- 旗竿敷地に舞い降りた宇宙船 -

2009年9月

敷地面積 145平米 (44坪)
建築面積 60平米 (18坪)
延床面積 118平米 (36坪)
木造2階建て
建築費:2700万円 坪単価:76万円



長いアプローチを持つ旗竿地。4方を隣家に囲まれた敷地で開放感と採光を得るため、建物の4隅を切り欠いて坪庭のような空間を設けています。

玄関を入ると目の前に広がるホール。黒い空間に無着色の木の「櫓」が屹立します。庭を充分に取れない敷地のため、黒い空間を「庭」に見立てたデザインです。

壁一面が棚になっていて、膨大なフィギュアのコレクションを飾れます。ホールの東南角の大開口は、木製サッシュのガラス戸が引き込み式で、隣の緑を見事に借景します。

半地下に掘り下げた食堂と台所。天井のアルミ板は、ご主人と設計事務所スタッフが自ら貼りました。台所カウンターは全長5m超。道路向かい側の公園を借景します。

半階上がった書斎と和室。飾り棚を透かして見るホールは内とも外ともつかない空間。やはり、道路向かい側の公園を借景できるよう窓を設けています。

書斎から半階上がった水回り。天井は全面がガラス張り、窓も大きく露天風呂並の開放感です。トイレにも大きな窓を設け、向かいの公園を借景します。

水回りから更に半階上がった天井収納と子供室。天井収納も書斎同様コレクション空間。構造材むき出しの子供室は将来の分割も想定しています。

最上階にある寝室。床高は地上5m以上になります。ここまで上がると、隣家の屋根越しに向かいの公園が楽しめます。

建築家のプロフィール
安部良
1966年 広島県生まれ
1990年 早稲田大学理工学部建築学科卒業
1992年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了
1992~1995年 早稲田大学 石山修武 研究室
1995年 architects atelier ryo abe 設立
2001年~ 東海大学理工学部建築学科兼任講師
2010年~ 明治大学理工学部建築学科兼任講師

architects atelier ryo abe
所在地 東京都渋谷区渋谷4-2-22-201
電話 03-3407-4676
FAX 03-3407-4675
E-mail aara@aberyo.com
URL http://www.aberyo.com

建築家の一言
敷地は密集した住宅街の中の竿の長い旗竿地で、要望はプライバシーを確保しつつ精神的な開放感を獲得すること、光と風を取り入れること、趣味を飾るための大小様々な棚を作ることでした。
近隣に対する圧迫感を消しながら朝昼夕の採光を取るように、建物の四隅を切り取るように開口部を作りました。1階ホールは「庭」と感じられるような大空間にし、四隅の開口とトップサイドライトから差し込む自然光が空間の表情を刻々と変化させます。
ホールの周りに取り付くように生活のための機能をもった7つのステップフロアーを螺旋状に配置しました。各フロアーの高さのズレは隣家との視線を気にせず外界を臨める開放感を生み出しています。 空間に仕掛けられた多様な変化と動きが、「部屋」「家」「建築」という領域感覚を曖昧にしてくれることで、日々の生活の中に新鮮さと開放感を獲得できると期待しています。
 
渡辺篤史の感想
山本さんは「建もの探訪」をきっかけに建築家と出会ったそうです。誠に喜ばしい。
この建物のテーマは、4方を囲まれた敷地でいかに外部空間を取り入れるかだと思います。そして同時にご夫婦は実用性を無駄にしない事も希望されたそうです。この難しい命題を見事デザイン力で解決しました。空間それぞれに物語が宿るような楽しさがあります。更に、これからご家族の成長に合わせて変化していくための余白もあります。建物の成長をこれからも見守って行きたいですね。