放送したお宅
2010年8月13日(金)放送
東京都大田区・藤田+岩間邸
- パティオで繋がる2世帯住宅 -

2007年7月

敷地面積 185平米 (56坪)
建築面積 103平米 (31坪)
延床面積 252平米 (76坪)
木造
建築費:非公開 坪単価:非公開



板張りの黒の棟と吹き付け仕上げの白い棟、2棟構成の2世帯住宅。両世帯は2階で繋がっています。間を取り持つ中庭は、ヨーロッパの路地裏を思わせる緑豊かな空間です。

子世帯の玄関ホールの広さは約9畳。居間が3階なので、ここで接客もできるよう広めに作られています。大きな開口から中庭を存分に楽しめます。

3階は全て子世帯のための空間。LDKの広さは22畳強。南隣に集合住宅が迫っているため、南面に敢えて窓を設けず、スリット状の天窓から採光します。

『キッチンで過ごす事が多い』ご家族のための開放的な台所。1.6m四方の作業台は、朝食などを食べるカウンターにもなります。収納扉に黒板塗料を塗って家族の伝言板に。

台所の隣に水回りを配置し、家事動線を短縮。浴室の壁一面をガラス折れ戸とし、広大なバスコートと相まって抜群の開放感を実現しました。

バスコートを兼ねた8坪強のウッドテラス。高めの壁がプライバシーを守りつつ空に近付く空間です。テラスに面した書斎は階段・LDKとも繋がり、回遊する動線を作ります。

中庭に面した親世帯の玄関。正面の収納扉に貼られたのは唐紙。玄関脇の和室は、お父さんの謡曲の稽古場です。和室の地窓を通して中庭を見ると、どことなく和の風情。

親世帯のLDKは2階。ハーブなど鉢植えを飾ったテラスが、立体的な中庭を演出します。台所背面の収納の一部は洋裁が趣味のお母さんのミシンコーナーです。

建築家のプロフィール
堀内 雪

筑波大学基礎工学類卒。
毛綱毅曠建築事務所設計室長を経て2000年、堀内犀とスタジオCYを設立。
主な受賞歴/1998.商環境デザイン賞。2001.裏磐梯シービジョンズコンペ。
2007.あたたかな住空間コンペティション。2008.Residential Award2007。
2008.茨城県建築文化賞。2008,2009.日本建築家協会 優秀建築選他

スタジオCY
所在地 東京都町田市相原町787-2-W316
電話 042-773-2247
FAX 042-773-2777
E-mail contact@studiocy.com
URL http://www.studiocy.com

建築家の一言
都会の敷地のなかで、なによりも、光や風、そして緑の気配などの自然を感じながら、気持ちよく暮らすことができる空間にしたいと考えました。内と外に3つの庭・吹抜を設け、光と緑を取り入れ、非常に開放的な空間となっています。部屋ごとに見える景色が変化して、都会の中にありながら、静かで贅沢な空間となっています。
デッキの通路を入って行くと、シンボルツリーのある吹抜があります。家のなかの気配が感じられ、半分は外、半分は内のような不思議な空間となっています。やがて中庭が見えて、その手前右側に子世帯の玄関が….スティールサッシのガラスで囲われたその玄関は、明るいホールのような空間となっています。光がやわらかく入り、中庭の緑が見える気持ちのいい空間です。対して親世帯は、唐紙をアクセントに落ち着いて凛とした気配を醸し出しています。鉄骨の軽快な階段が、吹抜けのように、上階から光や風を取り込むとともに上下空間をおだやかにつなげています。
子世帯のLDKは大勢で話をしながら料理ができるように、キッチンには大型の正方形のワークトップを配しました。このフロアには、大きなルーフテラスがあります。広々としたテラスは、バスルームや室内に空の気配をとりこんでいます。

生活のリズムやテイストが違う、2つの世帯の「箱」が組み合わさって、互いにほどよい距離感を保ちつつ、光が射し、風の抜ける、気持ちのよい生活を楽しんでいただいています。
渡辺篤史の感想
2世帯住宅は、付かず離れずの間合いが難しいのですが、この建物は中庭を介した親子の距離感が絶妙です。設計時に中心となったのは子世帯の奥さんですが、彼女は建築が大好きで『私のように我が儘な施主は他にいないに違いない』とまでおっしゃいます。果たして、感性の合う建築家に出会い、家づくりを上手に進められました。どこに身を置いても心地良い素晴らしい空間です。