放送したお宅
2010年8月6日(金)放送
神奈川県横浜市・杉田邸
- 藤壷ハウス -

2008年7月

敷地面積 231平米 (70坪)
建築面積 67平米 (20坪)
延床面積 67平米 (20坪)
RC造
建築費:3000万円 坪単価:129万円



天に向かって伸びる4本の「角」を持つ、超個性的な外観。実は、北斜面、4方を囲まれた旗竿敷地で採光を確保する合理的デザインです。

子供たちが独立した60代夫婦が、2人暮らしのためにコンパクトに建て替えました。庭のバーベキュー炉はご主人自作。玄関ドアは建て替え前の家からの流用です。

室内は完全ワンルーム+バリアフリー。7.5m四方の正方形を屋根型そのままの天井が緩やかに「田」の字に仕切ります。

4つの「角」の先端にはそれぞれ天窓が設けてあります。プライバシーを守るため窓は最小限ですが、この天窓で充分な明るさを確保しています。

床と造作家具は全てMDF(中質繊維板)で部材統一。食器収納も引き出し式にして出し入れを容易に。アームライトも組み込んだアイランド型作業台も機能的です。

仕事や観光で訪れた世界各国で買い集めた人形と奥さんが和紙で作った人形。この膨大なコレクションを飾れるスペースを作る事も、この家のテーマだったそうです。

寝室までも居間と一体の空間ですが、折れた天井が心理的な間仕切りとして機能。ロフトは仕事部屋。4か所のうち最も高い位置にある、この天窓のみ開閉可能です。

水回りの扉は引き違い戸にして、将来車椅子生活になったとしても出入りし易いよう考慮。浴槽は大きなジェットバスです。

建築家のプロフィール
鈴野浩一、禿(かむろ)真哉

鈴野浩一
1973年神奈川県生まれ。96年東京理科大学工学部建築学科卒業、98年横浜国立大学大学院工学部建築学専攻修士課程修了。シーラカンス K&H、Kerstin Thompson Architects(メルボルン)を経て、2004年株式会社トラフ建築設計事務所共同主宰。05年東京理科大学非常勤講師、08年昭和女子大学非常勤講師、10年共立女子大学非常勤講師、武蔵野美術大学非常勤講師。

禿真哉
1974年島根県生まれ。97年明治大学理工学部建築学科卒業、99年同大学大学院修士課程修了。
青木淳建築計画事務所を経て、2004年株式会社トラフ建築設計事務所共同主宰。08年昭和女子大学非常勤講師。

建築の設計をはじめ、インテリアデザイン、展覧会の会場構成、プロダクトデザインなど、幅広く取り組んでいる。主な作品に「テンプレート イン クラスカ」「NIKE 1LOVE」「ブーリアン」「港北の住宅」など。2005年アジアデザインアワード大賞、JCDデザインアワード2007金賞、商空間アワード2007グランプリ、2009年度グッドデザイン賞等受賞。

トラフ建築設計事務所
所在地 東京都品川区小山1-9-2-2F
電話 03-5498-7156
FAX 03-5498-6156
E-mail torafu@torafu.com
URL www.torafu.com

建築家の一言
ご主人は造船の技術者で、造船現場を監督しながら世界を飛び回っている。そのこともあり、行った先々で手に入れた各国の人形が約300体もある。中には奥様の趣味である折り紙による人形も飾られている。築35年の長年住まわれた住宅の建て替えであったことから、新しい住宅では各所にその名残がある。玄関のドアは、建て替え前の旧宅で使っていた木製ドアを再利用し、脇には室内を飾っていた絵皿がコンクリートの壁面に掛かっている。飾られた色とりどりの人形の背景にもなっている大きな白い壁面は、差し込む光を受けて表情を変え、その時々で住まい手は居場所を選ぶことができ、生活に変化を与えていく。
渡辺篤史の感想
外観は、マッターホルン、牡蠣殻、藤壷、色々な物に見えます。外壁も、コンクリートに浮かんだ模様が窯変を思わせます。個性的な建物ですが、中に入っても個性的。ワンルームで、しかもバリアフリーと、将来を見越しての住む人にやさしい間取りです。4つの天窓が非常に効果的です。最大で7mの高さを持つ吹き抜けを通して降り注ぐ太陽光は、日々の生活を明るく照らし、豊かな気持ち、心の安らぎを与えてくれるように感じます。