放送したお宅
2010年7月30日(金)放送
東京都中野区・奥野邸
- 光がインテリア 9坪の家 -

2009年5月

敷地面積 52平米 (16坪)
建築面積 31平米 ( 9坪)
延床面積 86平米 (26坪)
在来軸組木造
建築費:2350万円 坪単価:90万円



大きな箱の上に一回り小さな箱を乗せたような外観。住宅密集地でプライバシー確保のため、開口部を最小限に抑えました。1階の縦格子は玄関ドアと車庫の扉です。

クルマ好きのご主人が希望したビルトイン車庫。その最奥に4畳大の個室を設けています。お気に入りの書籍などを収めた“離れ”感覚の籠り部屋です。

2階は16畳のLDK。居間と台所・食堂の床に20cmの高低差を設けて心理的な間仕切りに。東面の壁の棚はビルトインされたシステムラックで高さを任意に設定できます。

3階を一回り小さくした事でできた“隙間”がL字形の天窓に。プライバシーを確保しつつ抜群の明るさを得ました。季節・時間帯によって変化する光の筋がインテリアです。

白主体の内装にあって北面の壁のみ緑色に塗装してアクセントに。石灰を混ぜた塗料は光の当たり方によって色が変化。濃淡模様も抽象絵画のように感じます。

居間の片隅に柱を利用して机を作り付け、書斎コーナーにしました。テレビ台はキャンティレバー。下部の地窓が通風に効果的です。

3階は寝室と洗面・浴室。プライベート空間を1フロアにまとめました。洗面と浴室の間の仕切りは透明ガラスの引き戸です。

近隣の家々の屋根を越えて眺望が広がる屋上テラス。季節と天気が良ければ富士山まで見渡せます。水栓と電源も引いてあるので多目的に使えます。

建築家のプロフィール
田井幹夫
1968年 東京生まれ
1990~91年 石原計画設計
1992年 横浜国立大学工学部建設学科建築学コース卒業
1992~93年 ベルラーへ・インスティチュート・アムステルダム
1994~99年 内藤廣建築設計事務所
1999~ アーキテクトカフェ設立
現在横浜国立大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師

アーキテクトカフェ・田井幹夫建築設計事務所
所在地 東京都中央区銀座3-14-8 松宏ビル501
電話 03-3545-4844
FAX 03-3545-4845
E-mail a_cafe@gb3.so-net.ne.jp
URL http://www.architect-cafe.com/

建築家の一言
狭小地にもこんなに気持ち良さへの可能性がある、そんな住宅にできたのではないかと思います。各階が都市生活への様々な回答として、独立しつつも全体でひとつの空気を共有し、どこにいても家族同士の暖かみを感じ取る事ができる住宅です。
1階はクルマ好きの旦那さまのスペースです。奥には離れのような小部屋があり、日常から離れた特別な場所に感じられます。2階は目玉のリビングスペースです。眺望を閉ざされた周辺環境で、外部に気持ち良く繋がれるのは空でした。斜線制限から段状になった建物形状を利用して、L型のトップライトがしっとりと落ち着いた、でもどこか開放感を感じる事のできる特別なリビングとしています。3階ではようやく景色が開かれています。浴室と寝室は連続した一室空間として、安心感のある明るいスペースです。屋上は地上からは想像のできない遠くまで開かれた景色が広がっています。いわば天井のないリビングです。
このように、各階でまったく異なる外との繋がりを無意識的に体験できる、とっても都市的な住宅といえるのではないでしょうか。
渡辺篤史の感想
奥野さんご夫妻は『建もの探訪』を永年ご覧になっているそうで、実にありがたいですね。そして、家を建てるにあたっては、当番組をはじめ数々の住宅建築のメディアに目を通されて『これは!』という建築家に出会いました。ハウスメーカー、地元の工務店など、家の建て方は1つではありません。しかし、本当に気に入った家を建てるには、心の寸法まで測ってもらえるような建築家との家づくりが最も近道のように思います。