放送したお宅
2010年5月21日(金)放送
神奈川県鎌倉市・天野邸
- 古建具から始まった家づくり -

2009年11月

敷地面積 232平米 (70坪)
建築面積 81平米 (25坪)
延床面積 136平米 (41坪)
木造
建築費:2950万円 坪単価:72万円



外壁を黒い縦格子で囲い、外から目隠しをしつつ採光をします。庭は『家の顔』と考え、駐車スペースもデザインしました。

玄関扉には蔵戸を利用。リサイクルショップで一目惚れをして『この蔵戸を使って欲しい』と建築家に依頼。正に建具から始まった家造りです。

2階は21畳LDK。梁・柱を黒く塗って、古建具と調和させた。海外生活の中で『日本』の良さを改めて感じたご夫婦は、古い民家の要素を多く取り入れました。

天板はモルタル仕上げの、L字型オープンキッチン。2階東側はバルコニー。その更に上は一坪の花見台。近くの公園の桜は花見台からの眺めが一番です。

LDKの横はオーボエとファゴットを演奏するご夫婦のレッスン室。古建具で仕切っていますが、あえて防音にはせず音楽で溢れる家にしました。

建具を開けばレッスン室もLDKの一部。友人を招いて小さな演奏会を開きました。上にポリカーボネイトで仕切った7.5畳のロフトもあり多様性があります。

1階は床・壁を杉、天井に檜を使用して、2階と雰囲気を変えました。12畳の子供部屋は将来仕切れるように左右対称に設計。ご夫婦の寝室は8畳です。

洗面台の天板はモルタル。十和田石とヒノキを使った浴室。今はまだ未完成ですが浴室から見える裏庭も緑でいっぱいにする予定です。

建築家のプロフィール
平林 繁
1963年 東京生まれ
1986年 東京芸術大学卒業
1988年 東京芸術大学大学院修了
磯崎新アトリエ入社
2001年 平林繁・環境建築研究所設立

平林繁・環境建築研究所
連絡先 神奈川県鎌倉市山崎1390-1-112
TEL 0467-47-0837
FAX 0467-47-0837
E-mail hira@ab.auone-net.jp
URL http://www.ac.auone-net.jp/~hira/
 
建築家の一言
SKY FIELD HOUSE
丘陵地の東斜面の住宅地に建つ黒い片流れ屋根の住宅。正面はレッドシダーの竪格子で覆われる。2階の主室(居間・食堂・台所)はレッスン室と繋がり開放的な音楽ホールとなる。そこは東側のバルコニー越しに向かいの山並みまで眺望が利き、南側に隣家の視線を避けた連続する高窓を設け、空に向かって大きく開かれている。バルコニーのさらに上に1坪の花見台を設け、浮遊感を味わいながら桜を見下ろす。古い民家で使われていたケヤキの1枚板の蔵戸を玄関扉に利用し、また繊細な意匠を凝らした格子戸、ガラス戸、板戸を間仕切りに取り入れ、懐古的なエレメントを新しい空間に融合させている。内装は外壁面を大壁、間仕切りを真壁として扱う木造表現とした。特に2階の木造架構は黒く染色し、古い建具と馴染ませている。新旧の取り混ぜた意匠が空間に深みを与え、さらに熟成されていく。
 
渡辺篤史の感想
見所がたくさんある、木造の堅牢な建物です。まず玄関扉です。1枚板ですから、直径どのくらいの樹木から切り出されたのでしょうね。今では貴重品です。2階に上がって片流れ屋根のLDKです。太い梁と柱が印象的です。アメリカで7年の生活をして、良い意味で感性を持ち込んで建築家とのコラボレーションで上手くいった建物です。ファゴットとオーボエの生演奏というサプライズでしたが、本当に癒されました。