放送したお宅
2010年4月30日(金)放送
東京都世田谷区・松井邸
- 居間でお花見 桜並木沿いの家 -

2009年9月

敷地面積 145平米 (44坪)
建築面積 59平米 (18坪)
延床面積 99平米 (30坪)
木造
建築費:2090万円 坪単価:70万円



四季を楽しめる遊歩道沿いの敷地。春はもちろん桜です。切妻屋根の建物を屋根材などに使われるガルバリウム鋼板ですっぽりと覆ったモノトーンの外観。

玄関ドアは背の高い木製。2方向から出入りできるシュークローゼットを設けて玄関回りをスッキリとさせました。

2階はワンルームのLDK。窓の大きさを抑え、桜の花がよく見える位置にのみ設けています。東側にはデッキ。ロフトは2階床面積のおよそ半分の広さです。

アイランド型の台所は、桜を眺めながら作業できる位置。スツールを置いて食卓にもなります。背後の収納の黒い扉は大工さんからの“新築祝い”です。

居間の西面の壁には飾り棚を兼ねたロフトへの階段があります。奥様によると、ここが桜を眺めるベストポジションだそうです。

居間の一角に和室を設けました。北面の壁は柿渋で染めた和紙貼り。1日がかりで貼ったのは設計事務所のスタッフだそうで、こちらも“新築祝い”です。

1階は、2つの個室と水回り。ご主人が書斎として使っている部屋からは、遊歩道の金木犀(キンモクセイ)がよく見えます。

扇形の大きなジェットバスとレインシャワーは、ご主人のこだわり。洗面台に使った鹿子の木(カゴノキ)も知人の材木屋さんからの“新築祝い”だそうです。

建築家のプロフィール
竹山 聖(Kiyosi Sei Takeyama)

1954年12月24日大阪生まれ。
小学校の時にはマンガ、中学ではエレキバンド、北野高校ではバスケットボールに明け暮れつつ建築を志す。大学ではオーケストラでコントラバスを弾く。
1977年京都大学を卒業し、東京大学大学院に進学。原広司の下で修士課程を修める。この間、1978~9年の<西アフリカ地域海外集落調査>に参加。
大学院在学中の1979年に設計組織アモルフを創設して設計活動を始める。並行して様々なメディアで批評活動を展開。
92年より京都大学准教授。毎年学生たちと古代都市遺跡を訪れ、都市の原形を辿る旅を続けるとともに、現代都市ヴィジョンを構想し、提案もしている

株式会社 設計組織アモルフ
連絡先 〒604-0861 京都市中京区烏丸通竹屋町上ル大倉町215番地6F
TEL 075-256-9600
FAX 075-256-9511
E-mail info@amorphe.jp
URL http://www.amorphe.jp
 
建築家の一言

0.若々しく希望に溢れたオーナー夫妻の夢に形を与えること。

1.コンパクトな住宅のプロトタイプをめざす。
シンプルな平面形と外形をあたえよう。合理性と経済性のために。
快適な居住環境のために十分な光を取り込み、風を通す。
空気層をはさんだ高い断熱性を持つ外壁と屋根の仕上げを施す。
ウッドデッキのテラスと天井の高い広間に距離感を込める。
キッチンカウンターをステージに見立てた演劇的構成/語らいの予感。
広間とつながったり切り離されたりする多機能な和室が醸す余韻
吹き抜けから収納力のあるロフトが見え、天井に広がりを感じさせる
思いがけないほどに大きく広々としたバスルームが贅沢。

2.緑道に切り取られて変形になった敷地を有効に活用するために、
近所の家並みの秩序からあえて角度を振った配置計画とする。
余白が生まれ、敷地にゆとりが出る。
緑道に平行することによって桜や樹々が近くなる。
棟の走る長手方向が東西軸となり、まっすぐに南面する。
西側道路からのアプローチの妙が生まれる。
住まいの向きが周囲に与えるちょっとした違和感と、にもかかわらぬその寡黙なたたずまいが、
オーナーの遊び心と品格を伝えてくれる。

 
渡辺篤史の感想
家づくりは、土地探しから建築家と共に進められたそうです。建築家がその期待に応え、建主の家族のように親身になって設計を進めた様子が目に浮かぶようです。桜並木に面した素晴らしい立地。
この立地条件を室内に取り込んで、素晴らしい寛ぎの空間を生み出しています。建築の楽しみが詰まった建物です。