放送したお宅
2010年4月2日(金)放送
東京都世田谷区・林邸
- 右も左も上も下も窓 窓だらけの家 -

2009年7月

敷地面積 72平米 (22坪)
建築面積 51平米 (15坪)
延床面積 125平米 (38坪)
鉄筋コンクリート造
建築費:非公開 坪単価:非公開



直方体に正方形の窓が穿たれた、格子を思わせる外観。一見シンプルですが、よく見ると窓ガラスが全て違った角度になっているという実は凝ったデザインです。

内部に入っても格子パターンが繰り返されています。横方向はもちろん、天井面=上階床面の透明ガラスを通して上下も見通せます。

将来、料理教室を開くことを想定して、台所は玄関から近い位置に設けました。中心の作業台はキャスター付きで移動可能。天井の穴は上階の子供室に繋がります。

天井高4.3mの食堂。床の一部をタイル貼りにして格子パターンを反復しています。自然木を利用したオリジナル照明器具やクラシカルな食卓も似合う空間です。

居間の床は、造作ソファの足元を1段下げ、さらに材を変えることで、格子パターンを反復。広さは7.5強ですが、上下左右に隣室と繋がっているので開放感抜群です。

透明床のある主寝室。アクリルと強化ガラスを合わせて強度を高めています。天井面の格子パターンは皺加工した銅板。スタンドライトを吊ったような照明器具はオリジナル。

子供室は全ての部屋を見下ろせる場所。床の一部は人工芝です。行き止まりの階段が飾り棚になります。最上階の吹き抜けに面した柵をイス形にするなど、こちらも遊び心満点。

最上階の浴室。ここでは格子パターンで床に浴槽が掘り込まれています。テラスも格子パターンが繰り返されているため、屋内とも屋外ともつかない不思議な空間となっています。

建築家のプロフィール
藤本壮介
1971年 北海道生まれ
1994年 東京大学工学部 卒業
2000年 藤本壮介建築設計事務所 設立

藤本壮介建築設計事務所
連絡先 東京都新宿東榎町10-3 市川製本所ビル6F
TEL 03-3513-5401
FAX 03-3513-5402
 
建築家の一言
都内に三人の家族が住む住宅である。
例えば三階建ての家族の中に三人の人間がいる時に、それぞれの階に家族が分散してしまったら、ちょっと寂しいのではないだろうか。

そこで、すべての部屋を、それぞれの部屋の個別性を残しながらも立体的に繋げていって、個別性と全体性が両立するような家の作り方は出来ないだろうか、と考えた。

要求された部屋数が比較的多かったことから、それらの部屋を平面上に4分割された領域に並べ、更に3層に積み上げていって、そのあとそれらの10個の部屋を壁・床・天井の大きな穴によって、一気にどんどん繋げていく。部屋が沢山ある家とも言えるし、家全体というひとつの部屋にいくつもの居場所が散在しているとも言える場所が生まれた。その穴だらけの箱のような模型を眺めているうちに、これは、全く似ていないが、一本の木のような場所になっているのではないかと思えてきた。
樹木のような建築という時に、それは樹木のような形をしている必要はない。むしろ、一見樹木とはかけ離れた形でありながら、樹木の持つ隠れた豊かさをあらわすような新しい方法を見つけ出すことが建築の面白さではないだろうか。
 
渡辺篤史の感想
住宅建築が芸術であることを改めて思い知らされました。ご主人は工業デザイナーでクライアントあっての仕事をされていますので、デザインを任されることの重要性をよくご存知です。建築家に思い切って表現してもらいました。相性も良かったんでしょうね。ビジュアルは当然のこと、実際に身を置いても心地良い建物になっています。