放送したお宅
2010年3月12日(金)放送
東京都大田区・尾形邸
- 集めて貼って12年 メキシコ産タイル3000枚の家 -

1998年8月(内装は現在も進行中)

敷地面積 354平米 (107坪)
建築面積 141平米 (43坪)
延床面積 386平米 (117坪)
鉄筋コンクリート造
建築費:非公開 坪単価:非公開



メキシコ産手描きタイルが貼られた外観。このタイルは室内にも使われていて、家全体では合計3000枚以上になります。絵柄もメキシコの歴史を感じさせるものです。

玄関ドアをくぐると38畳大×天井高5mの大食堂。内装のほとんどは建築家・写真家であるご主人による自主施工。躯体の竣工から12年間、現在も作り続けています。

室内にもたくさんのタイルが使われています。中央に置かれた陶製の“塔”は、世界遺産“メキシコシティ歴史地区”の“タイルの家”の屋根飾りと全く同じ仕様の物。

業務用設備と卓上電磁調理器を組み合わせた個性的な台所。頭上の大きなシャンデリアは“塔”と同じメキシコ人作家の手による物です。

ご主人の仕事場兼趣味室兼寝室。半地下のため、1年を通して室温が安定していて過ごし易いそうです。沖縄のコンクリートブロック、中国の骨董ドアなど、こちらの内装もユニークです。

足場用のパイプを使った階段とキャットウォーク。奥さんが建築アトリエとして使っている場所は、メキシコ製の額縁で囲まれています。

上階の寝室の扉は、ご主人自らが漆を塗った物。お婆さんの家から譲り受けた障子をクローゼットの扉に使うなど、アンティークをバランス良く取り入れています。

水回りにもメキシコ産タイルをたっぷりと使用。荒々しい仕上げのコンクリートと華やかなタイルがマッチしています。

建築家のプロフィール
尾形一郎/尾形優
尾形一郎 1960年京都生まれ。85年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。写真家として「ウルトラバロック」「MEXICO: HOTELS」などの写真集を刊行、各地で展覧会を行うかたわら、写真を使った建具や家具の制作も手掛ける。09年、世界の辺境に建つ家の姿を捉えた写真集「HOUSE」(FOIL)を刊行。

尾形優 1964年東京生まれ。87年早稲田大学理工学部建築学科卒業。一級建築士事務所タイルの家代表。世界の辺境を巡る撮影体験から湧いたインスピレーションをもとに、建築設計やインスタレーションなどを行う。09年写真集「HOUSE」(FOIL)を刊行。

一級建築士事務所タイルの家
連絡先 東京都大田区
FAX 03-5483-0555
E-mail info@yoioo.com
URL www.yoioo.com
 
建築家の一言
私たちは世界の時間を集めたような建築をつくりたいと思っています。世界各地を巡って、不思議な家の姿を撮影する写真家としての顔ももっているからです。
自邸「タイルの家」はコンクリートができてから11年以上も自分達で工事をしています。タイルの家の設計を始めたのは、メキシコのウルトラバロックの教会を撮影している頃でした。その時に知り合った陶芸家ゴルキー・ゴンサレスさんにタイルや陶壁画を作っていただき、17世紀の古い扉や持送りなども持ち帰り、膨大な時間が凝縮された教会の写真と共に家の中心に取り付けました。その後も撮影は沖縄、中国、ナミビア、ギリシャと続き、多様なインスピレーションを受けて自邸は今も進化し続けています。
外観は東西南北の窓が全て同じ場所にあいているシンプルな作りで、内部も建築的な表現を極力抑えています。作為の無い素朴な建築空間は、集められた調度品からバロック的な力を引き出します。
 
渡辺篤史の感想
まず外観に圧倒されます。メキシコの歴史・文化を映した鮮やかなタイルに目を奪われます。そして、室内には更なる驚きが待っていました。メキシコをはじめ、中国、沖縄など様々な国・地域の調度が渾然一体となって迫って来るようです。
躯体の竣工から12年、未だ完成していません。物作りの大好きな施主が、これからも作り続ける家。訪れた人の感性を刺激してくれる建物です。