放送したお宅
2010年3月5日(金)放送
千葉県柏市・福原邸
- 22度ひねった中庭 室内外が一体化した平屋 -

2009年4月完成

敷地面積 259平米 (79坪)
建築面積 122平米 (37坪)
延床面積 119平米 (36坪)
木造
建築費:2600万円 坪単価:72万円



長方形の建物の中央に約22度斜めに中庭を配置した平屋。外周は窓を少なくしてプライバシーを確保。玄関脇にはコンクリート製ベンチを作り付けています。

玄関に入って真っ先に目に飛び込んで来るのが中庭テラス。引き込み式のガラス戸は、閉じた時にも中庭との一体感を損なわないよう、木製サッシュの上下が隠れるようになっています。

中庭を斜めに配したため、台形になったLDK。中庭を通して向かい側の個室まで視線が抜けるため、実際の面積以上の広がりを感じます。

中庭面の窓は、庇と目透かし張りの雨戸によって日差しをコントロール。壁と天井、壁と床のエッジに敢えて数ミリの隙間を設け“線”を強調しています。

ダウンライトは、天井の平滑さを損なわないよう、既製品を使わず大工仕事で作りました。ペンダントライト、スイッチ盤も、この家だけのオリジナル品です。

家族みんなで囲んで作業できるアイランドキッチン。円形の食卓も建築家によるオリジナルです。

中庭を斜めに配した事で、通常であれば廊下になってしまいそうな場所がピアノ室になりました。トイレや納戸の引き戸の把手は、建築家自らが手作りしたコンクリート製。

中庭に対して開いた主寝室。一方、子供室は唯一中庭に面さず独立性の高い部屋に。和室も、敢えて玄関土間を渡らないとアクセスできない“離れ家”風です。

建築家のプロフィール
山本卓郎
1973年 滋賀県生まれ
1996年 京都大学工学部機械学科卒業
1996~97年 日本電気株式会社
2001年 早稲田大学理工学部建築学科卒業
2003年 同大学院卒業
2003~05年 アトリエ・ワン
2005年 山本卓郎建築設計事務所設立

山本卓郎建築設計事務所
連絡先   新宿区西早稲田2-17-34-28
TEL   03-3207-4570
FAX   03-3207-4570
E-mail   takuroyama@iris.ocn.ne.jp
URL   http://www3.ocn.ne.jp/~yamamotj/homepage/
 
建築家の一言
中庭を持つ平屋の住宅である。数十年前に分譲された住宅地にある敷地は、たまたま典型的なサイズに割り切れず、通常の1.5倍程度の広さで販売されていたためむしろ人気がなく、長らく駐車場として利用されていた。この土地を建主が購入したことが計画の発端である。

建主の希望は「平屋」「草木の手入れの必要のない庭」「一体に近い内部空間」と明快であり、敷地が広いせいもあって必然的に中庭形成が選ばれた。木を植えない以上屋外の庭は景観にはならず、それなら庭を室内化し、見かけ上の内部空間を大きくした方がいい。しかしながら、細長い敷地の中央にある程度の広さの中庭を配置すると、建物は中庭自体によって分断されてしまうことになり、建主の希望する「一体に近い内部空間」を実現することが出来ない。

そこで中庭を斜めに配置し廊下状の空間をなくし、中庭周囲の空間がすべて居室としての広さをもち得るようにした。これらは相互に直接つながったひと続きの空間であり、中庭を共有することでお互いに強い結びつきをもっている。中庭はいわば大きな箱の中にポンと投げ出された入れ子の箱であり、各空間は大きな箱の一部という一体感を共有しながら、それぞれ異なる機能的な役割を分担している。
 
渡辺篤史の感想
都市住宅では比較的ポピュラーになったコートハウスですが、この建物では中庭を斜めに配置した事で、今までに無い広がりを感じさせる空間が生まれました。こうした大胆なアイディアの一方で、とても細かい部分まで考え、作り込まれています。照明や把手など1つ1つにこだわりが感じられます。
設計は奥さんの建築学科時代の同級生だそうです。見事、期待に応えましたね。