放送したお宅
2010年2月26日(金)放送
埼玉県八潮市・松田邸
- 360度回遊する中庭住宅 フェレットが駆け回る家 -

2009年2月完成

敷地面積 307平米 (93坪)
建築面積 57平米 (17坪)
延床面積 90平米 (27坪)
木造軸組
建築費:2660万円 坪単価:89万円



大型車両の通行が多い周辺環境から切り離すためと、直射日光を嫌うペットのフェレットたちのため、外周に窓の無い「ロ」の字形コートハウスになりました。

玄関とは別に、ポーチから直接中庭への出入り口を設けました。中庭面の壁は銀色のガルバリウム張り。反射した自然光が、大きなガラスを通して室内へ入ります。

室内の床・壁・天井は濃い茶色に塗装。中庭から空を見る風景は「巣穴」のイメージです。PC好きのご夫婦のため、中庭に面した特等席をPCコーナーに。

床下にフェレット用通路をビルトイン。幅11cm×深さ8.5cm。一部に強化ガラスを敷いて、行動を観察できるようにしています。

コンパクトな台所。作業台の高さはご主人に合わせて高め(90cm)に設定。食卓も置かず、カウンターのみのシンプルな構成です。

オープンな水回り。入浴しながら中庭と空を望めます。浴室の床に設けた小さな段差は、入浴時以外には通路として使えるよう配慮。動線の回遊性を確保しています。

2階の寝室は、居間側と浴室側の2方向からアクセスできます。隣にはウォ-クインクローゼットも設けられています。

水回りの上は、梯子でアクセスするロフト。隣接する屋上テラスへは、寝室からクローゼットを通って行く事もできます。

建築家のプロフィール
設計:中辻正明 中辻雅江
プロデュース:朝妻義征
中辻正明
1964年 兵庫県生まれ
1989年 京都大学工学部建築学科卒業
1991年 同大学院修士課程修了
2006年 九州大学人間環境学府博士課程満期退学
1991年~1996年 早川邦彦建築研究室
1996年 中辻正明・都市建築研究室設立

中辻雅江
1967年 神奈川県生まれ
1990年 東京理科大学工学第二部建築学科卒業
1990年~1998年 キタムラ・アソシエイツ
1999年 清水建築設計室設立
2002年~ 中辻正明・都市建築研究室と共同

中辻正明・都市建築研究室
連絡先   東京都渋谷区恵比寿西1-3-5-601
TEL   03-5459-0095
FAX   03-3477-0095
E-mail   m-naka@mxj.mesh.ne.jp
URL   http://www2u.biglobe.ne.jp/~m-naka/

ベースメント
連絡先   東京都世田谷区代沢2-29-14-2F
TEL   03-5433-4333
FAX   03-5433-4337
E-mail   info@base-ment.co.jp
URL   http://www.base-ment.co.jp/
 
建築家の一言
 イタチ(フェレット)をこよなく愛するご夫婦の小住宅です。現在は3匹のフェレットと1匹のクロネコと同居。フェレットたちは強い陽射しが苦手です。そして、敷地のまわりに加工場や大型車の往来が多いことから、窓のない黒い外壁としました。おふたりの強い要望だった中庭が建物の中央にあります。やわらかい光を供給してくれる中庭はホワイトとシルバーの明るい無彩色で仕上げました。
2.7m×3.5mの中庭は、正方形プランの一辺8mの1/3と1/2.3に相当します。残りの内部空間はあまり奥行きがありません。このバランスで、季節や天候のうつろいを感じながら、ご自分たちらしく楽しく過ごせる住空間を創り出すことが最大のテーマでした。
  ここでは個室や閉じるという考えは希薄です。どのスペースも通り抜けられるようになっていて、住宅全体が中庭を中心とする立体的なループとなっています。視線が対角、対辺まで届き、そして上下や右にも左にも歩き廻れるので、とても広く感じられます。床レベルも天井高さも移動とともに変わり、様々なシーンが展開します。その高低差を活用して、フェレットの遊び場兼寝床となるイタチトンネルを作りました。
  外壁や勾配屋根には通気層、床下には断熱開閉型式の気口をそれぞれ設け、空気の排出と取入れを行います。その他、シーリングファンやエコキュート、カーボンファイバー複合フィルムの電気式床暖房など、大小の効果的な仕組みや設備システムによって、一年を通して人にもフェレットにも快適な住空間が実現できています。
 
渡辺篤史の感想
外側に窓の無い黒い箱のような建物。しかし、室内は中庭の効果で、外観からは想像できない解放的な空間が広がります。360度、中庭を囲む間取りですが、場所によって高低差があり、角度を変えると表情も変化します。夜ともなれば、月や星が楽しめそうです。
この建物の住みやすそうな雰囲気を生み出している一番の要因は、フェレット専用の遊び場をビルトインしてしまうほどの愛情の深さでしょう。ご夫婦、フェレットたち、そして黒猫が一緒に暮らす方舟のような建物です。