放送したお宅
2010年1月15日(金)放送
東京都国分寺市・宮川邸
- 1階と2階の間にプラスアルファ 2層床の家 -

2009年4月完成

敷地面積 83平米 (25坪)
建築面積 33平米 (10坪)
延床面積 65平米 (20坪)
木造
建築費:2050万円 坪単価:100万円



片流れ屋根のシンプルな外観。道路に面した北面は、2階に1.6m四方の嵌め殺し窓が1つあるだけです。夜、その窓から漏れる暖かい灯りが街を照らします。

玄関には上がり框を設けず60cm角のタイルを敷き詰める事で完全にフラットな空間に。蹴込みの無い階段は、2階からの明かりを1階に落とします。

1階天井と2階床の間に高さ約60cmの“隙間”を設け“2重床”としました。収納として使われる他、2階の床の一部をくり抜いて居住空間としても使われます。

2階はワンルームのLDK。2カ所で床がくり抜かれ、それぞれ居間、書斎として使用。視点が変わる事で空間に変化を生んでいます。1階への視線の抜けも確保されています。

台所は平行する大きな2つのカウンターで広い作業スペースを確保。食卓は、奥さんが学生時代に使っていた勉強机で、芸術家であるお父さんのお手製です。

2階の北西角にある潜り込んだ書斎。机がそのまま床に連続する不思議な感覚が楽しめます。2方向の大開口で開放的。近隣の緑を借景します。

ロフトにもお父さん作の机が!1階もワンルーム。廊下との間の3つ造作収納と引き戸以外に壁は無く、必要に応じて仕切ります。

床下に基礎を兼ねた収納が。実は1階も“2重床”なのです。タイルが玄関から洗面室、浴室まで同じピッチで連続して広がりを感じさせます。

建築家のプロフィール
森清敏+川村奈津子
森 清敏
1968年 静岡県生まれ
1992年 東京理科大学理工学部建築学科卒業
1994年 同大学院修士課程修了
1994~03年 大成建設株式会社設計本部
2003年~ MDS一級建築士事務所共同主宰
2006年~ 日本大学非常勤講師
2009年~ 東京理科大学非常勤講師

川村 奈津子
1970年 神奈川県生まれ
1994年 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業
1994~02年 大成建設株式会社設計本部
2002年 MDS一級建築士事務所設立

MDS一級建築士事務所
連絡先   〒151-0053 東京都渋谷区代々木5-8-6-502
TEL   03-3465-6648
FAX   03-5941-8590
E-mail   info@mds-arch.com
URL   http://www.mds-arch.com
 
建築家の一言
この住宅では木造2階建てという従来の階構成の中に、天井懐、床下といった、通常存在を忘れられている部分に着目しました。屋根および各階の床をそれぞれ2枚ずつに分解し、その各々の2枚の版を上下から任意にくり抜くことで、仕事をするところ、くつろぐところ、食事をするところといったいくつかの場をつくりました。一方、くり抜いた穴から視線が抜けることにより空間がゆるくつながり、どちらにも付属しない隙間は収納として利用され、間接的に居住面積を補っています。
この計画では「小さいこと」を生かしたユニークな空間をつくりましたが、「敷地の広い」住宅ではその広さを生かしきらないともったいないと思います。他にも、敷地に高低差がある、住宅が密集している、眺望が良い、緑が多いなど様々なケースがありますが、その土地が持つ特徴を最大限生かした「気持ちの良い空間」をつくりたいと常々思っています。
 
渡辺篤史の感想
シンプルな片流れ屋根の建物。周囲の緑と馴染む外観です。内部はというと、1階に個室・水回り、2階に共有スペースを置いた、こちらもシンプルな構成です。しかし、空間の豊かさはシンプルに終わりません。2重にした床の一部をくり抜いて掘り下げ、対角線の位置に居間と書斎を作りました。これによって、空間に変化と広がりを生み出しています。梁と垂木を独特の組み合わせた方をした天井も、構造のしっかりした印象を与えてくれます。心が温まり、楽になれる建物です。