放送したお宅
2009年12月25日(金)放送
東京都狛江市・林田邸
- 地下室の屋根が庭? 半分埋まった家 -

2009年2月完成

敷地面積 109平米 (33坪)
建築面積 40平米 (12坪)
延床面積 87平米 (26坪)
RC造、木造、一部鉄骨造
建築費:非公開 坪単価:非公開



容積の半分以上を地下に埋めた建物。2階建て相当の容積を確保しつつ、建て込んだ住宅地に広い空を楽しめる庭を実現する斬新なアイディアです。

地上部分はワンルームのLDK。天井高は3.7mもあるので開放感抜群。窓を高い位置に設置して開放感とプライバシーを両立します。

LDKの中央にある階段の手摺が居間と食堂を緩やかに仕切ります。テレビ台も手摺の上端を越えないようデザインした特注品。

造作のキッチンカウンターは浮いたように見えるデザイン。奥行きが深いので、吊り戸棚が無くとも収納力は充分に確保されています。

地上から約1m上がったコンクリートの庭は地下部分の屋上。4カ所の天窓とガラスドアの塔屋が地下に明かりを落とします。

庭にはベンチやシンクを設置。居間の延長として使えます。お子さんにとってはお絵描きのキャンバス、物干し用のバーも鉄棒になってしまします。

地階はプライベートスペース。天窓と地上レベルの高窓から存分な光が入り、地下とは思えない明るい空間です。階段部分の角は優しい曲面に仕上げました。

各個室は大きな引き戸で閉じる事も可能。洗面台には親子のような大小2つのボウルが設置されています。浴室も天窓からの採光で明るさ充分です。

建築家のプロフィール
長谷川豪
1977年   埼玉県生まれ
2002年   東京工業大学大学院修士課程修了後、西沢大良建築設計事務所
2005年   長谷川豪建築設計事務所設立
現在   東京工業大学非常勤講師

受賞
SDレビュー2005鹿島賞
第9回東京ガス住空間コンペグランプリ
平成19年東京建築士会住宅建築賞金賞
第28回INAXデザインコンテスト金賞
第24回新建築賞
 
長谷川豪建築設計事務所
連絡先   東京都渋谷区神宮前2-18-7外苑ビル5階
TEL   03-3403-0336
FAX   03-3403-0337
E-mail   hsgwg@ybb.ne.jp
URL   http://www.hsgwg.com
 
建築家の一言
敷地は100平米ほどの角地で、建蔽率が50%と限られていました。ただでさえ広くない敷地の半分以上が庭になるというわけですから、設計を進めていくうちに自然と、建物だけでなく、庭をどうつくるかということにも意識が向かいました。また近隣の住宅を見ると、建物と前面道路のあいだにある庭は、猫の額ほどしかなく、道路側の窓はカーテンで塞がれ、それがこの住宅地の印象を少し暗いものにしていた。とにかく、建物と庭と道路(地面)の関係を、新たに再編成する必要性を感じました。

敷地いっぱいに建物を建て、半分を居間、もう半分を庭、庭の下に寝室や水回りなどのプライベートな半地下の空間をつくりました。この半地下の空間は、地階で地盤面上1m以下のため建蔽率対象外となっています。

地面より1m高い位置に庭がある。リビングのソファの高さに庭が広がる。ベッドや浴槽からは横たわりながらトップライトを介して頭上の庭を眺める。色々な向きと高さをもつ数種類の開口と2つの階段が、居間/庭/寝室の3つの空間を少しずつ繋いで、穏やかに混ぜ合わせていきます。どこにいても地面や空との繋がりを感じられる住宅になっていて、家具や設備が設えられた庭も生活の一部になると同時に、この空間が、密集した住宅地を少し明るくするようなものになればと考えました。
 
渡辺篤史の感想
大きな4角い箱が上下・左右にずれて、しかも片方が地面に埋められた配置の建物です。密集した住宅地に広い庭と広い空を生み出す全く新しい発想です。窓の穿ち方、天井の高さなど、隅々まで気配りが行き届いている印象です。居間から階段を降りて地階のプライベートスペースに向かい、そこから別の階段を上って再び庭に出られるという回遊性も楽しいですね。柔軟性のある建物は、家族が思いのままに人生を描いていける巨大なキャンバスの家と言えるのではないでしょうか。