放送したお宅
2009年10月9日(金)放送
埼玉県川越市・松本邸
田園に浮かぶ家(2)
− 縦横無尽の素材使い 宇宙船のような現代民家 −

2008年9月完成

敷地面積 233平米 (71坪)
建築面積 117平米 (36坪)
延床面積 188平米 (57坪)
木造
建築費:2560万円 坪単価:45万円



田園に浮かぶ宇宙船のような外観。住宅ではあまり使われる事の無い素材を積極的に使っています。半透明の高窓は文字通りのキャットウォークを兼ねます。

奥行きが10m以上もある細長い土間。玄関であると同時に、奥の方は建築家であるご主人の事務室となっています。偏光ガラスを用いたスリット窓がユニーク。

地盤が弱いため「浮き基礎」を採用。杭を打ち込むより低コストで済み、地下室もできました。現在は、日曜大工や趣味のプラモデルの工房として使われています。

南から、デッキ→広縁→居間→ロフトと少しずつ上がって行く構成。大きなワンルーム空間を段差で緩やかに仕切ります。北東の角には、2畳大の茶室もあります。

シンク側はオープン、レンジ側はクローズな台所。食器収納などはご主人が自作。背面のモダンアート作品にも見える板は、建築中に大工さんが使っていた作業台を流用した物です。

広間から半階下がった子供室。まだ、お子さんが小さいので、現在は収納として使われています。

台所の背後の階段を上ると約7畳の主寝室。広間側のアルミ板は押し出し窓になっていて、開放して通気します。

水回り手前の市松の壁は、耐震壁ですが、小物を飾るのにちょうど良い場所になりました。浴室はモルタル仕上げ。浴槽はステンレス製です。

建築家のプロフィール
松本康弘建築工房 担当 松本康弘
1971年   埼玉県生まれ
1995年   早稲田大学理工学部建築学科卒業
1997年   同大学院修士課程修了
石山修武研究室スタッフとして勤務
2003〜2004年   同大学非常勤講師として勤務
2004年   松本康弘建築工房設立
 
松本康弘建築工房
連絡先   埼玉県川越市今泉209-1
TEL   049-235-0168
FAX   同上
E-mail   matukino@air.email.ne.jp
URL   http://www.ne.jp/asahi/ma/arch/
     
 
建築家の一言
川越郊外の田園地帯に建つ自宅兼設計事務所である。
世に流布しているハイスペックな家、ハイスペックな幸福像ではなく、自分はどういう生活を送りたいのかを考え直し、形にした。それを「現代民家」と呼んでいる。インターネットの普及で個人が出店したり、SOHOのように自宅で仕事を行うことが非常に容易な時代になってきた。江戸時代以前の民家も今で言うSOHOと同じで生活と仕事が融合していた。こうした日本建築は水平方向に展開する、いわゆる平屋だ。この民家SOHOの水平性を現代的に解釈し、上下方向の操作を加え、立体的なヒラヤが生まれた。

ハウスメーカーの作る住宅は住むためのキカイとしての機能は満たしているかもしれないが、シアワセになるための機能はない。施主という個人に対しての即応性が全くと言っていいほど無い。棚一つ作ることさえ容易ではない。

気持ちよく生活するのに高価で高性能なものは必要なく、ローコストなものでも工夫をすれば十分楽しく生活ができることを形にしたかった。
 
渡辺篤史の感想
のどかな田園に囲まれた建物です。ご主人は建築家、奥さんはインテリアデザイナーというご夫婦。お互いを育て合う、刺激し合う生活です。そんなご夫婦の自邸ですから、実験的要素の強い建物です。しかし、身を置いてみると意外なほど落ち着きを感じます。この感覚がどこから来るのかと考えると「美」「用」「強」=美しく、使い易く、頑丈であるという建築の3要素がきちんと実現されている事に気付きます。単に挑戦的なだけではない基本のしっかりした住宅です。