放送したお宅
2009年9月27日(日)放送
東京都世田谷区・吉原邸
− アーチをくぐるたび変わる色 モロッコの街角に暮らす家 −

2008年12月完成

敷地面積 72平米 (22坪)
建築面積 36平米 (11坪)
延床面積 104平米 (32坪)
鉄筋コンクリート造
建築費:2800万円 坪単価:85万円



間口が狭く、奥行きの深い、しかも鉤形に変形した敷地に立つ鉄筋コンクリート造の住宅。真ん中にそそり立つ茶色の大壁がシンボルです。

中心に立つ茶色の大壁は室内、それも地階から3階までを貫いています。この壁の左右に変形した部屋が連なる間取り。開口部は全てアーチ状になっています。

アプローチから玄関土間〜居間の一部までを同一のタイル敷きとし、内外の一体感を演出します。食堂スペースは小上がりになっています。

居間とアーチ形の窓で繋がった台所。独立したコンパクトなスペースですが、閉塞感は少なく、動線も短いので機能的です。

壁に使われた鮮やかな青色のタイルと洗面台の飴色のガラスタイルが印象的な水回り。半畳大の吹き抜けから外光が存分に入る明るい空間です。

3階の寝室兼プレイルームは、天井・壁が空色に塗装されています。将来は、当初の計画通り、子供室になる予定です。

寝室から半階上がった納戸の壁・天井は、鮮やかな赤色。浴室にも明かりを落とす吹き抜けから、光が入ります。ご主人の読書部屋としても使われています。

地階は、紫色の壁の仕事室。当初は寝室として計画されました。アーチの向こうは広いウォークインクローゼットです。

建築家のプロフィール
西久保穀人
1973年/佐賀県趣旨員
学歴・所属など : 明治大学、同大学院卒業
 
ニコ設計室
連絡先   〒167-0043 東京都杉並区上荻1-16-3森谷ビル5F
TEL   03-3220-9337
FAX   03-3220-9337
E-mail   nishikubo@niko-arch.com
URL   http://www.niko-arch.com
     
 
建築家の一言
まず最初に、細長い敷地を分割するように、大きくて分厚い壁を南北に沿って斜めに建ててみました。すると大きな壁の「あちら」と「こちら」に、たくさんのいびつな、小さな場所ができました。いびつな空間は、その大きさごとに、適した用途の部屋にして、半階ごとに斜めの壁のアーチをくぐりながら展開していくような構成にしています。路地沿いの出入り口から、子供達が飛び出してくるような、大きな壁のあちらとこちら。どちらがウラで、どちらがオモテか、分からなくなるような空間。そんな話を吉原さんと共有させて頂き、設計を進めました。
素材についても、ざらざら、デコボコ、ゴツゴツとそういう濁音の形容詞をたくさん使ったような気がします。濁音の空間は、ずっと昔からそこにあったように、でんとしていて、いろんな色やいろんな国から来た照明や家具を受け入れてくれました。
 
渡辺篤史の感想
新築の建物なんですが、室内に入った途端、歴史と安らぎを感じます。それは、アーチ形の出入口、色合いなど、ご夫婦が愛するモロッコの路地を思わせる空間構成のためでしょうか。中心の大壁を軸に幾何学的・対称的に展開する間取りも、イスラムの装飾様式=アラベスクに通じるように思います。大好きな異国の風景が、単純な再現や模倣ではなく、きちんと消化してデザインに取り入れられています。