放送したお宅
2009年9月20日(日)放送
千葉県八千代市・戸邉邸
− 斜めの空間に暮らす ねじれた“列柱”の家 −

2008年11月完成

敷地面積 138平米 (42坪)
建築面積 66平米 (20坪)
延床面積 104平米 (31坪)
木造
建築費:非公開 坪単価:非公開



外観はストイックなグレーの四角い箱。玄関周りの開口だけが台形で、ただならぬ雰囲気を醸します。一部が見えている斜めの木質の壁は、室内から連続しています。

玄関に入って右手にそびえる斜めのうねる壁。実は65本の柱材を少しずつずらして並べた“列柱”です。1階の床は全体がモルタルでフラットに仕上げられています。

玄関を通り抜けて最初にたどり着くのは居間。壁際の蹴込みの無い階段を通して2階から光が落ちて来ます。

居間から“列柱”をくぐった場所にある食堂・台所。天井の一部が低くなっている事が、吹き抜けのダイナミックさを引き立てます。

台所の向かい側、中2階の高さの第2の居間。床座で寛ぐ場所ですが、ステージにも見えます。吹き抜けを挟んで向かい側の寝室が見えます。

第2の居間の下は、半地下になった書斎。デスクは基礎と一体になったコンクリート製。“列柱”に開けられた小窓が楽しい仕掛けです。

2階の主寝室は壁で閉じられていないオープンな空間。吹き抜けを挟んで第2リビングを見下ろします。

浴室はバルコニーとの間を全開できる折れ戸にして露天風呂感覚を演出しました。お風呂好きのご夫婦も大満足の水回りです。

建築家のプロフィール
下吹越 武人(しもひごし たけと)
1965年   広島生まれ
1988年   横浜国立大学工学部建築学科卒業
1990年   同大学大学院修了、北川原温建築都市研究所
1997年   A.A.E.設立
現在、法政大学准教授
 
A.A.E.
連絡先   東京都港区西麻布2-24-36-2F
TEL   03-6805-1240
FAX   03-6805-1241
E-mail   studio@aae.jp
URL   http://www.aae.jp
     
 
建築家の一言
この住宅は<ナナメ>という言葉がキーワードになっています。<ナナメ>という概念は、設計プロセスの中で建て主との議論から生まれてきました。<ナナメ>とは直接的なかたちについての言及ではなく、<ナナメ>がつくりだす余剰性についての探求です。つまり、住まいを機能性や効率性で捉えるではなく、余白や隙間のような余剰空間が住まいの拠り所になるのではないか、という概念です。
最終的に<ナナメ>は平面中央をスラッシュ型に横断する無垢の木材を並べたHPシェル曲面となって現れました。「住まい方を固定せずに様々なスタイルを楽しみたい」という建て主の要望に沿って、床のレベル差を利用した多様な場をもつ構成としました。HPシェル壁によってそれぞれの場を広げたり包んだりしながら、小さなスペースは個別性を保ちながら相互に連続する開放性を持っています。平面図や断面図では表記が難しい、空間的な場の相互関係を生む住宅を考えました。(下吹越武人)
 
渡辺篤史の感想
外観はシンプルな四角い箱ですが、内部はダイナミックです。うねった壁が建物の中心を貫いています。断面が正方形の柱材を微妙なカーブをつけて並べた、言わば“列柱”です。全体が大きなワンルームのような間取りですが、この“列柱”によって空間に変化が生まれました。建築には、まだまだ新しい可能性があることを感じます。