放送したお宅
2009年7月26日(日)放送
千葉県鋸南町・富士井邸
都心から近い別荘(2)
− 房総 田園の別荘 −

2008年4月完成

敷地面積 397平米 (120坪)
建築面積 137平米 (42坪)
延床面積 122平米 (37坪)
木造
建築費:2987万円 坪単価:81万円



緑豊かな田園に置かれた黒い箱。外壁は焼杉です。南面に大きな開口を設け、それ以外の方角は敢えて開口を制限したデザイン。

床を高めに設定しているため、玄関は長いスロープになっています。靴収納の上は、ご主人のコレクションを飾るギャラリースペースです。

玄関スロープを上り切ると目前に広がる田園のパノラマ。軒の深いテラスは床レベルを居間に合わせてフラットに。縁側感覚で使えます。

風景を切り取る大きな開口は、雪見障子・ガラス戸・網戸・雨戸が全て引き込み式。天井の傾斜を生かすため、引き戸の高さが1枚ごとに違えてあるという力作です。

食卓の下の床は着脱式でフラットにも掘り炬燵にもなります。台所の背面は全て収納。家庭菜園へのアクセスのため勝手口も設けられています。

隠し扉を開け、階段を上がるとデッキテラス。居間とは違った角度から田園風景を楽しめます。居間の西隣の個室はゲストルームとして使われます。

白一色で清潔感のある浴室にヒバ材の浴槽がアクセント。バスコートには水盤が設けられ、水底に設置された照明が揺らめきます。

主寝室は居間と一体空間ですが、障子を閉める事で落ち着いた個室になります。ホームシアターも設置されています。

建築家のプロフィール
石井秀樹
1971年   千葉県に生まれる
1995年   東京理科大学卒業
1997年   東京理科大学大学院修了
1997年   architect team archum設立
2001年   一級建築士事務所 石井秀樹建築設計事務所設立
 
一級建築士事務所 石井秀樹建築設計事務所
連絡先   東京都文京区水道1-5-24 2F
TEL   03-3818-1172
FAX   03-3818-1173
E-mail   isi_h@isi-arch.com
URL   http://www.isi-arch.com
 
建築家の一言

都心に住む夫婦の週末住宅であり将来の終の住処としての計画です。
敷地には起伏が少なく温暖な気候の南房総の低い山間の田園地帯が選定されました。
最初に敷地を訪れた時に、敷地の南側の土手に咲く色鮮やかなキリンソウが印象的でした。その上に田圃が広がり四季折々の豊かな表情を見せます。草花が咲く土手越しに広がる田圃、遠景の山並みという風景の構図が浮かび、その瞬間に床面を田圃の高さまで持ち上げて南側に大きな開口を設け、この風景を生活の一部として取込む建物構成が決まりました。南面は大きな庇によって室内に深い陰影をつくり、庭、土手、田圃、そして遠景の山並の多彩な色彩と対比をなして、風景をより鮮やかに映し出しています。
平坦に広がる土地に対して、建物ボリュームはできるだけ低く抑え、なだらかな大屋根により地域特有の強い南風を受け流す形状としました。屋根形状にそって内部空間を配置し、田圃を吹抜けてきた涼しい風が室内を南北へと吹き抜ける構成としました。深い庇は夏と冬の日射を調整し、高く上げた床は多湿な敷地の湿気対策としても考えられています。自然に抗うのではなく、自然に生み出される形態であり、さらに太陽光パネル、雨水利用等この地から受けられる恩恵を最大限に生かした、そんな建物を目指しました。

 
渡辺篤史の感想
田園に佇む建物。私も思わず故郷での暮らしを懐かしく思い出します。富士井さんは永い間、こうした田園生活に憧れていたそうです。夢を実現されましたね。この建物の個性的な形は、五感全てで周辺の環境を味わうためのものです。現在は別荘ですが、将来仕事をリタイヤした暁にはこちらに移住する事を想定されています。人生を楽しむための終の棲家です。