放送したお宅
2009年5月31日(日)放送
東京都・松居邸
20周年特別企画(1)
- 60年代の名作住宅を守る 「白の家」移築 -

2008年3月完成

敷地面積 368平米 (111坪)
建築面積 121平米 ( 37坪)
延床面積 138平米 ( 42坪)
木造、地上2階
建築費:非公開 坪単価:非公開



オリジナルの「白の家」は1966年竣工。日本建築史に名を残す篠原一男・初期の代表作です。道路計画によって取り壊しの危機にありましたが、建主ほか関係者の努力により見事に移築されました。

約36畳ワンルームの広間。中央にそそり立つ北山杉の「心柱」は以前の建物から移された物。低めの開口からの明かりが、室内に陰影をもたらします。

篠原研究室出身の家具デザイナー・大橋晃朗によって、この家のためにデザインされた家具。竣工当時から40年間使われています。

建具も以前の建物から移された物。障子に合わせて外の窓枠を作るという、通常とは逆の工程は大変な苦労を伴ったそうです。

移築前は旗竿形敷地にたつ南向きの建物でしたが、新しい敷地では道路に面した東向きに変わりました。日の入り方が以前とは大分変わったそうです。

キッチン、水回りは、場所と広さをそのままに、設備の進化と家族の年齢を考慮して作り直されました。

1階の個室は、奥さんの革染色のアトリエと主寝室。移築前は15cm下げられていた床高を広間と合わせました。極力デザインを変えず寸法を変えるという、設計時に苦労したポイントです。

以前は主寝室として使われていた2階の個室。現在は、ご主人の書斎です。傾斜した天井に開けられた天窓からの明かりが部屋を照らします。

建築家のプロフィール
澤田 佳久(さわだよしひさ)
1970年   兵庫県生まれ
1993年   日本大学理工学部建築学科 卒業
1995年   日本大学大学院理工学研究科博士前期課程建築学専攻 修了
1995~99年   隈研吾建築都市設計事務所 勤務
1999年   澤田佳久建築研究所 一級建築士事務所 設立
文化学院 特別講師
2000年   慶応大学大学院 特別講師
 
澤田佳久建築研究所
連絡先   神奈川県横浜市神奈川区反町1-11-2-503
TEL   045-316-1515
FAX   045-316-1515
E-mail   ysbl@cf.mbn.or.jp
URL   http://www16.ocn.ne.jp/~ysbl/
 
建築家の一言
「白の家」移築3原則
  1. 原形を可能な限り保存すること
  2. 変更せざるを得ない場合は、当初の設計理念を守ること
  3. 諸条件の変化に基づき、変更すべきものは対応すること
    (クライアントの生活や現行法規への対応等)
この3原則を基本理念として、「白の家」は再生移築、すなわち「再築」されました。これを保存し継承することは、所有者の問題を超えて文化の問題であるというクライアントの高い見識と関係者の方々に支えられ、再築は実現しました。
「白の家」という抽象空間には、時間と生活を許容する優しさが満ちています。 この住宅の思想と空間はこれまでの40年の上に、この先の何十年もの時を重ね、継承されてゆくことでしょう。このプロジェクトを通して、建築の「永遠性」という課題に立ち向かう勇気を与えて頂きました。
 
渡辺篤史の感想
今日の日本では、20~30年で家を建て替えてしまう事が多いのですが、この建物の主は40年間お住まいになり、更に取り壊しの危機に際して移築してまで空間を保存しました。この建物を本当に愛してらっしゃいます。私も1日だけですが、ここに身を置いてみて、その気持ちがわかる気がしました。緊張感と安心感の同居する不思議な空間は、住む人に活力を与えてくれるように感じます。 このように長く愛される建物によって街並みが形成されていく。そんな時代が来る事を願って止みません。