放送したお宅
2009年5月3日(日)放送
東京都目黒区・森田邸
−予想外の仕掛けがいっぱい! 擁壁を切り取った“からくりハウス”−

2006年12月完成

敷地面積 66平米 (20坪)
建築面積 40平米 (12坪)
延床面積 103平米 (24坪)
木造(地上3階部分)・RC造(地下2階部分)
建築費:3250万円 坪単価:83万円



間口3.4m×奥行き14.2mの細長い敷地。南北2か所で道路に接しているので、玄関も2つあります。壁全体が上下するような車庫の扉がユニーク。

北面の窓は全て乳白色のポリカーボネイトが嵌められていて障子風。夜には灯りが漏れて、大きな行灯のようにも見えます。

北玄関は地下1階。杭を打つ代わりに、地盤が強くなる深さまで掘り下げたため、地下2階まで部屋ができました。

地下2階から2階まで4層を貫く螺旋階段。2階はワンルームのLDK。細長い敷地の長手方向に視線の抜けを作り、広さを演出します。

リビングの天井は片流れの屋根なり。高窓から採光します。収納の中から隠し階段を引き出すと、3階の納戸に上がれます。

北面の乳白色の大窓は、一見開閉するようには見えませんが、上下にスライドします。壁の中に窓と同じ重さの分銅が入っているので、軽い力で動作します。

壁一面の収納は、外側は白一色ですが、内側はカラフル。テラスとリビングの間の大扉は全開可能です。

寝室・水回り・WICといったプライベート機能は、全て1階に集約しています。

建築家のプロフィール
香川貴範+伊藤立平
伊藤立平
1974年   神奈川県生まれ
1998年   東京工業大学工学部建築学科卒業
2000年   東京工業大学大学院人間環境システム修士課程修了
2000年〜2008年   株式会社日建設計
2006年〜   SPACESPACE設立

香川貴範
1974年   大阪府生まれ
1998年   東京工業大学工学部建築学科卒業
2000年   東京工業大学大学院修士課程修了
2000年〜2006年   株式会社坂倉建築研究所
2006年〜   SPACESPACE設立
2007年〜   摂南大学非常勤講師
2008年〜   京都造形大学非常勤講師

受賞歴
2002年   邑楽町町役場庁舎設計提案競技 佳作
2006年   大門中央通り地区設計提案競技 佳作
2008年   住宅セレクションvol.2「家の風景・風景の家」 最優秀賞
2008年   ぐんま総合情報センター設計提案競技 佳作
2008年   熊本駅西口駅前広場設計競技 佳作

 
SPACESPACE
連絡先   大阪府大阪市西区阿波座1-14-17 本町センタービル501
TEL   050-3076-9964
FAX   050-3076-9964
E-mail   space@spacspac.com
URL   http://www.spacspac.com
 
建築家の一言
若い夫婦のための住宅。敷地は南北で道路に面し、北側の道路は窪地を囲い込む古い擁壁を介して、3.5m下に位置する。擁壁は古く、行政から撤去を指導された。そこで僕たちは、撤去すると構造的に弱くなる擁壁と、住宅の地下部をつなぎ、周りの住宅地を含めた構造的なメンテナンスをすることにした。こうしてできた地階は、地面から支持層まで2層の高さになり、擁壁より前の、沼地の頃の地形をなぞる形になった。3層の地上部は木造で、1階に寝室・水回り・駐車場を集め、2階に屋外テラスと連続し、南北に風を通す筒状のリビングを配置した。これは、夫婦が敷地を見て感じた「開放感」の実現である。リビングの片面に耐震壁を隠し、キッチンや階段を、棚や引出しと連続して収納した。この住宅は、長屋のように奥に延びた「長い家」と、擁壁がそのまま塔状に起きた「高い家」の、二つの建物を内包している。それぞれの壁に分銅式の上下建具をつけ、開閉するとリビングは劇的に外とつながり、外観は劇的に変化する。夫婦の新しい生活が、この住宅地の中で、うまく根付いてくれれば良いと思う。
 
渡辺篤史の感想
都心の便利な場所ですが、住宅密集地。面積はわずか20坪です。ここに家を建てようと思ったら、いかに伸びやかな空間を作るかがテーマです。2人組の建築家と施主夫婦、4人の若者がこれに挑戦し、見事な解答を導き出しました。それぞれに機能を集約した5層構成、動く壁や隠し階段など遊び心満点のディティール。どこを見ても楽しい建物です。友人が集まる事が多いという社交的なご夫婦にピッタリの住まいですね。