放送したお宅
2009年3月29日(日)放送
千葉県市川市・平野邸
−天井・壁・床 全てがスギ 新世代ログハウス−

2008年7月完成

敷地面積 100平米 (30坪)
建築面積 48平米 (15坪)
延床面積 90平米 (27坪)
木造 軸組木版造
建築費:1947万円 坪単価:71万円



長方形の敷地に「く」の字形平面の建物。珪酸カルシウム板を鎧張りした外壁が印象的。建物の外に取り付けられたガラスの箱が玄関です。

室内は天井・壁・床全てがスギ。300枚近い数の分厚いスギ板=木版を並べて構造としたログハウスに通じる工法です。無塗装の木版は、断熱・調湿効果も期待できます。

建物の北の端、家の長手方向を見渡す場所に配置されたキッチン。玄関から繋がる土間感覚です。ジャストサイズの包丁挿しが面白いですね。

階段の途中、中2階に奥さんの書斎を設けました。1階・2階、家全体を見渡す司令塔です。階段手すりの安全ネットはご主人が自主施工しました。

リビングは2階の南端。東西に大窓を設けて、デッキのような開放感を演出します。一部にステージのような段差を設けています。

リビングから橋のような廊下を渡って行く子供室。現在はリビングの一部のようですが、成長に合わせて仕切って個室化する予定です。隣は主寝室です。

1階の南東は、ご主人の趣味の音楽室。音漏れを防ぐため、完全に仕切られていますが、隣の部屋との仕切りがガラスなので、閉塞感は全くありません。

洗面室のシンクは、美容室の洗髪用。浴室は、浴槽も含めてFRP仕上げ。船舶照明の灯りが、白い壁に美しい影を映します。

建築家のプロフィール
須永 豪
1975年   東京生まれ
1994年   アコースティックギター製作
1996年   建築設計事務所勤務
2001年   須永豪・サバイバルデザイン設立
2008年   東京都武蔵野市から長野県松本市へ移住・移転
2009年   住まいの環境デザイン・アワード奨励賞受賞「杉シェルター」
著書に『住宅作家になるためのノート』(共著、2008年彰国社/)
 
須永豪・サバイバルデザイン
連絡先   長野県松本市
TEL   0263-50-9022
FAX   なし
E-mail   sd@sunaga.org
URL   http://sunaga.org/
 
建築家の一言
「テーブル&イス」の生活と「座して地べたゴロゴロ」をムリなく両立してほしい。それが唯一と言ってもいい要望でした。そして段々畑のようなプランができ上がりました。
この家のキーにもなっている中2階の書斎コーナーは、将来もしも親を呼んでの同居となっても生活に無理が生じないように、食堂と居間とを少し分けるための提案です。1階は意外にも調理から入浴までバリアフリーになっています。
この家は『杉シェルター』という名で私のHPでは紹介しています。柱も断熱材も無い、杉の板だけで出来たアコースティックな空間は、まるで大きな楽器の中に潜り込んだような柔らかさで、家族の日々と一生を包むシェルターを形づくっています。
平野邸では予定の建築費を守るため、内装のほとんどが木のままでネイキッドな状態です。家具や収納、表面のお化粧仕上などは、暮らしながら必要と気分に応じてカスタマイズしていくことでしょう。
いつの日か、漆喰で真っ白に塗られた平野邸も見てみたいなと、建築家はこっそり期待もしています。
 
渡辺篤史の感想
平面が「く」の字形の豊かな空間を持つ建物です。天井・壁・床全てがスギ板でできた「軸組木版造」という構造だそうです。木版が断熱・構造・仕上げ・調湿を兼ねる、ログハウスにも通じる作りですね。
間取りはワンルーム感覚。家族がどこに身を置いても、互いの気配を感じられます。若い建築家と建主が一緒に楽しみながら作った建物。家族と共に成長していく建物です。