放送したお宅
2009年3月8日(日)放送
千葉県我孫子市・山本邸
−10本の樹状ユニットが作る林 人工の木陰で暮らす家−

2008年7月完成

敷地面積 271平米 (82坪)
建築面積 107平米 (33坪)
延床面積 128平米 (39坪)
木造
建築費:3400万円 坪単価:76万円



「Y」字形の支柱と四角い屋根で構成されたユニット。樹木を模しているので『ツリーユニット』と名付けられました。10基の『ツリーユニット』が互いに支えあった構造体を作っています。

昼は『ツリーユニット』が、高窓からの明かりを室内に拡散させて明るい空間を作ります。夜は逆にライトアップされる事で、建物全体が照明器具のようにも見えます。

1階は室内に柱・梁が露出しないワンルーム。約30畳のLDKです。高窓と3か所の天窓からの明かりで、とても明るい空間です。

10本の『ツリーユニット』の内、LDKに面した3基は、井戸水を利用した輻射冷房を内臓。やさしい涼しさで、夏も快適だったそうです。

南向きの一番日当たりの良い場所に設けたキッチン。お子さんたちと3人で中に入っても余裕で作業できる広さです。「コ」の字形カウンターも使いやすそう。

『ツリーユニット』の「木陰」に隠れたような位置の書斎。大きなLDKの一画にありながら、落ち着きが感じられます。リビングとの距離感が絶妙。

大きく取った水回り。天上高はLDKと一緒で3mあります。東向きなので、高窓から朝日がたっぷり入ります。バリアフリーにも配慮されています。

2階は、客室として使われている和室と主寝室。和室は天井・壁が白い和紙貼り、主寝室は焦げ茶色の塗装と、対照的な仕上げが楽しめます。

建築家のプロフィール
末光 弘和+末光 陽子
末光弘和
1976   愛媛県松山市生まれ
1999   東京大学建築学科卒業
2001   東京大学大学院修了
2001-2006   伊東豊雄建築設計事務所
2007-   SUEP.
現在   東京電機大学非常勤講師
     
末光陽子
1974   福岡県八女市生まれ
1997   広島大学建築学科卒業
1997-2003   佐藤総合計画
2003-   SUEP.
     
 
一級建築士事務所SUEP.
連絡先   東京都世田谷区玉川4-21-1#203
TEL   03-3709-5915
FAX   03-3709-5915
E-mail   mail@suep.jp
URL   http://www.suep.jp
 
建築家の一言
建て主のご夫婦は、丁度、団塊の世代にあたる年齢で、ご主人の定年退職を数年後に控え、古い自宅を取り壊し、退職後そして老後を見据えたこれからの生活のための新居として家を建て替えることを決められました。我孫子市というのは、東京の中心部からも電車で1時間くらいの距離ですが、手賀沼などを始めとし自然豊かな環境がまだ沢山残っています。敷地も都心と比べると広く、庭つきの1軒家がきちんと建てられる場所です。ご夫婦は田舎に引っ込むのでもなく、都会に出るのでもなく、この住み慣れた場所に、自然と共にゆっくりとこれから暮らしていくそんなビジョンをお持ちでした。
少子高齢化が進むこれからは、定年後の人生も長く、皆それぞれが自分達なりに第2の人生を考える時代です。子供や会社のために頑張ってきた自分達へのご褒美として、老後の新しい住まいを考えるというのも、素敵な選択だと思いました。
 
渡辺篤史の感想
この建物の特徴は、なんと言っても『ツリーユニット』です。構造的にとてもしっかりしていると同時に、見た目もやさしく美しいです。
さて、家作りは、どの世代に合わせて作るかが大切です。子育てしやすいように作るか、子供たちが巣立った後の終の棲家として作るか、などです。この建物は『ツリーユニット』による強靭な構造と柱の無い大空間ですから、柔軟性ががあります。住まい方が変わっても、あるいは住まい手の代が代わっても、住み続けられる大らかさを持っていますね。