放送したお宅
2009年2月22日(日)放送
東京都世田谷区・杉谷邸
家の中に「外」を取り込むシリーズ(3) テラス
−屋内のようなテラス 屋外のような浴室 内外が逆転する家−

2008年6月完成

敷地面積 73平米 (22坪)
建築面積 43平米 (13坪)
延床面積 99平米 (30坪)
鉄骨造
建築費:2800万円 坪単価:94万円



北に向かって下がる斜面の敷地。切妻屋根で、道路面に窓の無いシンプルな外観。北面にぽっかりと開いた正方形の窓と、駐車場のための切り欠きがアクセントです。

傾斜地のため、玄関は地階。広い土間に趣味の自転車が4台置かれています。東側は将来の子供室。間仕切りも無く、床もモルタルですが、お子さんの成長に合わせて仕上げていく予定です。

1階は約21畳のLDK。建物の平面は正方形ですが、一角にテラスを“挿入”したようなL字形の部屋。視覚的には、テラスまで含めたワンルームです。

隣家が迫った東面、現在は空地ですが将来建物ができる可能性の高い西面には窓がありません。しかし、テラスと北面の窓、階段上の大きな天窓から充分な採光が得られます。

台所のカウンターは、食卓と一体。全長4m半のステンレス1枚物です。テラスに面したシンクの前は全面ガラスで開放感抜群。台所の床はDKから1段下げらています。

テラスの周囲を壁で囲い、開口は1.8m四方の窓1つだけ。「抜け」が確保された道路方向に視線を誘導して開放感を演出します。

2階は、寝室と水回り。床の一部をガラスにして下階に明かりを落とします。寝室は家の中に家がある「入れ子」状デザインのため、水回りは屋外のようにも見えます。

寝室は、木の色と屋根なりの舟底天井が、山小屋のような雰囲気を醸します。

建築家のプロフィール
都留 理子
1971年   福岡県福岡市生まれ
1994年   九州大学工学部建築学科卒業
青木淳建築計画事務所、シーラカンスを経て
1998年   都留理子建築設計スタジオ設立
 
都留理子建築設計スタジオ
連絡先   川崎市高津区下作延2-23-30 1F
TEL   044-272-6932
FAX   050-7513-5209
E-mail   info1@ricot.com
URL   www.ricot.com
 
建築家の一言
大きな家の中に、小さな家が抱きかかえられるようにしておさまっています。
許容建築面積の最大である大きな家は、空や街に対し開かれ光に満ちており、晴れた日の公園のような心地よい場所となることをめざしています。
夫婦2人の寝室として必要十分なサイズである小さな家は、大きな家の屋根をかたどる小屋形で、インテリア全体をバーチ合板で仕上げています。大きな家に大事に守られた、もうひとつの家です。
2つの家がお互いの特徴を際だたせることで、質の異なる心地よい空間が生み出されています。お友達が集まり仲の良い杉谷さんご一家によって、さらに心地よい空間になっていくことと思います。
 
渡辺篤史の感想
家作りは、建主にとって一生に一度あるかないかの一大事。しかし、設計者や施工社にとっては、日常の仕事です。そこには少なからず温度差が生じると思うんですが、このお宅については、そういった印象が皆無です。皆さん魂をこめた良い仕事をなさってます。
この建物は、建物の中に建物がある「入れ子」のような構造になっています。室内空間が外部化し、外部空間が室内化しているように見えます。その効果によって、実際の面積を超える広がりを手に入れているんですね。