放送したお宅
2009年2月8日(日)放送
神奈川県川崎市・北原邸
家の中に「外」を取り込むシリーズ(1) バルコニー
−しわしわ壁が包むバルコニー 段差が生み出す面白空間−

2008年4月完成

敷地面積 85平米 (26坪)
建築面積 47平米 (14坪)
延床面積 130平米 (39坪)
木造軸組工法、一部鉄骨造
建築費:2528万円 坪単価:64万円



個性的な「しわしわ」壁は、約500枚のガルバリウム鋼板を家族と友人の建築家の4人が手曲げで作りました。周辺の擁壁によく見られる間知石(けんちいし)をモチーフにしたデザインです。

車庫脇の扉をくぐると、玄関かと思いきや、そこは坪庭。シンボルツリーのイロハモミジが植えられています。1階から2階への階段室はトンネルのようです。

2階は、約29畳ワンルームのLDK。トンネルのような階段室、段差によって、空間に変化を付けています。無垢の杉板の床、漆喰の壁など、素材の柔らかさが印象的です。

ワークスペースは、居間の床がそのままデスクになる設計。バルコニーに面した開口部は、木製サッシュと複層ガラスの大きな引き違い戸でバルコニーとの一体感があります。

プライバシーを守りつつ開放感のあるバルコニー。「しわしわ」壁の内側は白く塗られ、太陽の光を柔らかく室内へと導きます。

キッチン・カウンターとダイニングの座卓は栗製。ご夫婦で材木屋さんまで出向き、木材選びと製作にも参加したそうです。レンジフードも木でカバー。

3階は、階段を上がった所がデスクと本棚を作りつけたワークスぺース。階段の左右に2つの個室が設けられています。3角形の窓、傾斜した天井がアクセントです。

1階は、寝室と水回り。寝室の2方向に出入り口を設けた回遊できる間取り。洗面室の窓から見える擁壁が「しわしわ」壁のモチーフ=間知石です。

建築家のプロフィール
佐藤 森
1973   神奈川県生まれ
1996   早稲田大学理工学部建築学科卒業
1998   同大学大学院修士課程修了
奥村昭雄研究室 修了(芸術修士)
1998-   トルコ、イラン、パキスタン、インド、中国など14ヶ国を経て、
ユーラシア大陸を陸路で横断
2000-   (株)アーツ&クラフツ建築研究所
2005-   ミャンマー、インド
2006-   (株)アーツ&クラフツ建築研究所
2008-   +0一級建築士事務所設立
 
+0一級建築士事務所
連絡先   神奈川県川崎市中原区上丸子八幡町596-101
TEL   044-422-8486
FAX   03-6856-4892
E-mail   pluszero@s01.itscom.net
URL   http://pluszero.info/
 
建築家の一言
敷地周囲の高低差のある地形をそのまま建物内部に引き込んだスキップフロア形式の平面とし、前面道路の傾斜と平行に傾けた屋根をのせる。こうすることで、それぞれがレベルや天井高さ、形状、そして性質の異なる、様々な個性を持った”場所”が生まれた。
スキップ状のフロアが邪魔になることなく、その床の段差が料理する、食べる、座る、歯を磨く、顔を洗う、フロに入る、勉強や仕事をするなどといった生活行為を誘発するように、生活に最低限必要なもの、つまり、トイレやバスタブや洗面器などの衛生機器、キッチンユニット、ダイニングテーブル、そして本棚などの収納を配置していった。さらに回遊性を持たせることで、行き止まりのない、物理的なもの以上に広さが感じられるようにした。結果、水廻り以外は特に使われ方が規定されていないような”場所”が残った。子供は三階で勉強してもいいし、西陽が強くなってきたら二階のカウンターに移ってもいい。冬は三階で、夏は一階で寝てもいい。その時々に家の中を歩き廻って適した居場所に移っていく、そんな住宅になればと考えた。
ファサードは敷地周辺に多くある擁壁をモチーフにしている。陽の当たり方や時間によって、そのファサードは表情を変えていく。
 
渡辺篤史の感想
ご主人は設備設計、奥さんは意匠設計。夫婦揃って建築のプロです。自宅の設計に際しては、住宅の経験豊富な同級生に設計を依頼しました。3人で激論を戦わせながらの家作りだったそうですが、このプロセスこそ素敵な時間だったんじゃないでしょうか。結果、生まれた建物には、創造の楽しみが随所に見受けられます。大胆な部分と繊細な部分が同居する素敵な空間です。