放送したお宅
2009年2月1日(日)放送
埼玉県さいたま市・幸田邸
-思い出の木々を守りたい 四季の庭を愛でる平屋-

2004年10月完成

敷地面積 323平米 (98坪)
建築面積 115平米 (35坪)
延床面積 114平米 (35坪)
木造
建築費:3600万円 坪単価:93万円



親の代から受け継いだ敷地。家族の思い出が染み込んだ花木をできるだけ残しつつ建て替えられました。全ての部屋から花木を楽しめるよう、庭を囲む形の平屋です。

庭には100種類を超える植物が育ち、四季折々の風景を楽しめます。玄関を挟んで東が「仕事」棟、西が「プライベート」棟となっています。

敷地の北西角に位置するLDK。庭側の全面ガラス戸、背後の高窓から1日中自然光が差し込みます。屋根なりの天井は無塗装で調湿効果が期待できます。

台所は扇の要のような位置にあり、庭を眺めつつ炊事できます。裏庭は通気・採光に有効な他、サービスヤードとしても機能します。食卓は幸田さん自らデザインした物。

LDKと同じく床高を低く設定し、庭との一体感を強調するデッキテラス。深い軒も安心感をもたらします。置かれている椅子は、幸田さんが大学時代に授業の課題で作った物です。

寝室からも庭を楽しめるデザイン。障子の開閉で光をコントロールします。天井高を抑えて、落ち着いた雰囲気を作り出します。

入浴しながらも庭を楽しめる浴室。内装はヒバ、浴槽はヒノキです。メンテナンス性も考慮されています。

書庫からはネコの目線で、アトリエからはトリの目線で庭を楽しめます。この建物で唯一2層になった部分ですが、半地下・中2階とすることで全体の高さを抑えています。

建築家のプロフィール
幸田 章
1953年   東京都生まれ
1978年   東京芸術大学美術学部建築科 卒業
1980年   東京芸術大学美術学部建築科大学院
奥村昭雄研究室 修了(芸術修士)
1980年   内井昭蔵建築設計事務所 入所
1990年   同上 取締役 所長室長
1991年   同上 退職
       <担当作品> ・世田谷美術館
               ・熊本テクノポリスセンター
               ・吹上新御所・他
1991年~   幸田章建築設計所 主宰
1998年~   文化女子大学生活造形学科非常勤講師
2002年~   日本工業大学建築学科非常勤講師
 
幸田章建築設計所
連絡先   東京都台東区池之端4-21-9 ラフェンテ103
TEL   03-5814-3436
FAX   03-5814-3437
E-mail   kohda@a.email.ne.jp
URL   http://www.ne.jp/asahi/kohda/ado/
 
建築家の一言

大宮の家-家族の記憶を繋ぐ庭
子供の時分から住み慣れた家をいよいよ建て替えることになった。実は18年前に一度、敷地中央に建つ住宅案を作っていたが、現在敷地のあちこちで、当時は影も無かった実生のケヤキが古屋の2階屋根を越え、父親が育てたイチョウ苗木はいつの間にか銀杏を付け、妹が撒いた食べ残しのグレープフルーツの種は樹木に成長し、実を結ぶまでになってしまった。そんな訳でそれらの樹木を伐採することなく配置できる家を計画し直すことになる。計画のポイントは次の5点である。

1. ケヤキ、イチョウ、花ミズキ、キンモクセイ、グレープフルーツなどの既存樹はその位置に残し、樹木を取囲む様に家を配置する。
2. 既存樹に加え夏ツバキ、山ボウシ、梅などの落葉樹を中心に新たに植樹し、ごく自然に近い雑木林の様な庭をつくる。周辺との境界も生垣やパーゴラ(むべ棚)などの植物で構成する。
3. 古い付き合いの隣家への日照や良好な環境を確保する為に、平屋建てとして、一部2階アトリエも半地下の書庫上部に中2階的につくり、建物全体の高さをできるだけ低くする。
4. せっかく作った庭を様々に楽しめるように、どこからでも眺められる様にしているが、その開口の向きだけでなく、地面すれすれの視野の広がる半地下書庫の窓や、むべ棚を見下ろせる中2階アトリエの窓、グレープフルーツ収穫に歩き回れる穏やかな傾斜の屋根に登る小さなテラスなどいくつか工夫をする。
5. 室内空間は玄関・アトリエ・書庫・居間・寝室・水周りを一連の空間と考え、コの字型平面の中で互いに独立と連続を両立させる。連続した空間を快適に過ごせるように全面床暖房とする。
家族の記憶を繋ぐ草木とヒトが同化し、永く存続する家を目指している。いつかこの家の住む手がいなくなった時には、保育所にでも使われたら、とても嬉しいと思っている。

 
渡辺篤史の感想
庭を包むように翼を広げた大鳥のような形の建物です。リビングはもちろん、浴室、半地下の書庫、どこに身を置いても庭を楽しめて、癒されます。
この建物の形は、元からここにあった樹木に遠慮し、近隣のお宅にも遠慮する事で生まれました。
犠牲的精神と申しますか、やさしい気持ちに溢れています。学ぶべき所が多いですね。